組織の力
2019.02.25
ヤッホーブルーイング流の「フラット」なチームビルディングとは?〈後編〉
一人ひとりが行動指針を自ら考えながら実践
クラフトビールの製造・販売を手がけ、『よなよなエール』をはじめとするエールタイプのビールでファンを増やしつつある株式会社ヤッホーブルーイング。同社では、『ガッホー文化』(「頑張れヤッホー」に由来するネーミング)を行動指針として掲げ、社員に限らずすべての社員がこの指針を常に意識しながら働いている。代表取締役社長井手直行氏は、「一人ひとりが本当の意味で経営理念に基づいて仕事ができるようになってきたのは、文化の共有・浸透に取り組み続けてきた成果だと思います」と語る。同社の社員が『ガッホー文化』をどのようにとらえ、具体的な行動に落とし込んでいるのかを井手氏にお聞きした。
行動指針を細かく規定しないのは
自力で進化してもらいたいから
『ガッホー文化』の最大の特徴は、構成する6つの項目、「フラット」「究極の顧客志向」「自ら考えて行動する」「仕事を楽しむ」「切磋琢磨する」「知的な変わり者」に、具体的にどう行動すべきかまでは示されていないことだ。一人ひとりが実践していく際に、迷いが生じたり、ピントのずれた行動をしてしまうことはないのだろうか。
「行動指針を具体的に規定していないのは、細かく説明しようとするとマニュアルになってしまうからです。マニュアル通りのアクションって、『自ら考えて行動』することとはほど遠いものですよね。それに、マニュアルに載っているケース以外のことがあると、思考がストップしてしまうデメリットもあります。そこで、考え方の芯だけを伝え、あとは日頃の行動やさまざまなコミュニケーションの場面で、機会あるごとに説明しています。自分なりに行動指針をかみ砕いて理解し、さらに進化させてもらいたいと願っています」
井手氏は、ヤッホーブルーイングが達成すべき目標として「2022年までに、日本のビール市場のシェア1パーセント」を掲げている。そこに向けて、今後はさらに企業成長が求められる。人員もさらに増やしていくという。そうなると、今までのようにていねいな行動指針の共有・浸透やチームづくりは難しくなっていくのではないだろうか。
「社員が増えていけば確かに、コミュニケーションに課題は出てくるでしょう。でも、そのつど全社で協力し、変化に合わせて進化していくことは可能だと思います。例えば、グローバル企業であるグーグルは、いずれの国でも唯一無二のカンパニーカルチャーを実践しています。私たちも同じように、会社の規模が拡大しても『ガッホー文化』を共有できるはずだ、と信じています」
軽井沢のヤッホーブルーイングを訪れる来客の中には、メンバーたちを見て「みなさんすごく楽しそうですけど、演出なんですか?」と井手氏に質問してくる人もいるという。それほど社内の雰囲気が明るいというわけだ。同社の社員は、フラットな環境の下で和気あいあいとコミュニケーションし、チームで働くことを楽しんでいる。消費者も、ビールのおいしさだけでなく会社が持つ雰囲気にも魅力を感じ、ファンとして同社を盛り立てる。このような幸せなサイクルは、行動指針をはじめとした経営理念を徹底共有することから始まるのだろう。
株式会社ヤッホーブルーイング
長野県・軽井沢で1996年に設立され、97年にビール製造を開始。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、日本ビール市場にバラエティを提供し新たなビール文化創出を目指す。『よなよなエール』や『水曜日のネコ』などのクラフトビールがビールファンの間で人気に。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、2017年から従業員100~999人の部門で3年連続ランクインを果たす。