組織の力

2020.05.12

Walking Meetingプロジェクト

“歩きながら働く“ウォーキング・ミーティング

Appleの故スティーブ・ジョブズやFacebook CEO のマーク・ザッカーバーグ、オバマ元米大統領など、著名な経営者や政治家がこぞって実践しているという「ウォーキング・ミーティング」。ワークスタイル視点で紐解いたその効果とはいかに? オフィスワーカーの健康維持と生産性向上に一石を投じうる、新しいはたらき方の実験・研究レポートです。

あなたがオフィスに来て、席に着いてから帰るまで、もっとも時間を費やして行っていることとは何でしょうか?
私たち(とくにデスクワーク業務が中心の方)が、多くの時間を割いていること、それは、"座ること"です。一日中、終始椅子に座りっぱなしということもしばしばあるのではないでしょうか。しかし実は、この"同じ姿勢を長時間続けること"は、喫煙と同じくらいの健康被害があると言われているほど、リスクのあるワークスタイルなのです。



"歩きながら働く"ウォーキング・ミーティングという名の解決策

座りっぱなしを解決するためには、適度な運動を取り入れることがもっともシンプルな解決法です。しかし、どうにも億劫...という気がします。勤務中に運動となると、そのために特別に時間を作らないといけないですし、なにより続くのかどうか...。日々多忙の中で、これは一筋縄ではいかないように思えます。

そこで、ワークスタイル研究所が着目しているのが「ウォーキング・ミーティング」という働き方。読んで字のごとく、"歩きながら"会議を行います。一体、これはなにを意味するのでしょうか? 実は、健康面だけではなく、業務の効率化、関係性の向上などのいくつものメリットがあるということで、海外メディアを中心に注目されてきた働き方なのです。

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まずは、過去にメディアで語られているメリットを、大きく3つに分類してみました。


メリット1:"運動が目的"から、"会議が目的"に。健康と働くが両立するワークスタイル
勤務中に運動を取り入れるうえで問題となってくるのは、運動をいかに業務と両立させるかという点。「仕事の合間に自席でストレッチや体操をしよう」「一時間に一度は立ち上がって歩こう」など、様々なものがこれまでも提案されてきています。しかし、運動自体を目的としている限り、業務を中断してそのための時間を作り出す必要があります。結果として、意志の強い人でなければなかなか長続きしない、というのが現実ではないでしょうか。

両立という点では、ウォーキング・ミーティングはまさに理想的と言えるでしょう。なぜならウォーキング・ミーティングでは、目的はあくまで会議だからです。 いつもの会議を行う時間が、そのまま運動する時間にもなります。そのため、わざわざ運動のための時間を新たに作り出さなくとも、1日のスケジュールの中に無理なく運動を組み込めるはずです。

足腰を鍛え、血の巡りを良くし、さらにはダイエットにも効果のある運動を、働きながら行うことができるのです。


メリット2:哲学者からIT企業のトップまで創造性を向上させる方法論
ウォーキング・ミーティングは、Appleの故スティーブ・ジョズや、Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ、Twitter CEO のジャック・ドーシーといったそうそうたるIT企業のビッグネームにくわえ、オバマ元米大統領も実践している方法としても有名です。中でもザッカーバーグ氏は、米西海岸にあるFacebook本社の屋上に一周1km弱の散歩用トレイルを作ってしまうほど、歩くことを重要視しています。

フットボールコートが7つ入るといわれるFacebook本社の屋上の様子が見てとれます

ウォーキング・ミーティングは、なぜこうした人々に支持されているのでしょうか?
それは彼らが、決められた時間の中でいかに創造的なアイデアを生み出せるか、ということを重視しているからです。かつては、かの有名な哲学者のカントも散歩愛好家として知られ、歩くことは、凝り固まった思考をほぐし、普段とは異なる新鮮なアイデアを生み出す方法論として、はるか昔から実践されてきたものでした。


メリット3:テーブル上から路上へ横並びで歩くフラットな関係性
上司や同僚、部下との関係は、仕事を円滑に進めるために良好に保ちたいもの。そんなときにまず気を使うのは、言葉遣いや態度といったコミュニケーションの基本ではないでしょうか? しかし、関係性に影響を及ぼす要因はそれだけではありません。一つ興味深いこととして挙げられるのは、相手との向き合い方です。どういうことか、会議を例にとって見ていきましょう。

会議は、テーブルを挟んで対面で行われることが一般的な形です。しかしこうした両者の位置関係は、上座・下座といった考え方にもあるような上下関係を際立たせたり、こちら側と向こう側、といった対立関係を意識させたりといった心理的な影響をもたらします。ある一つの共通した目的のために話し合いをする場合、こういった心理的影響はマイナスに働くことも少なくないのではないでしょうか。

一方、ウォーキング・ミーティングで会議をする場合はどうでしょう。基本的には同じ方向を向いて横並びで会話をすることになるため、「同じ目的に向かって進んでいく仲間」という感覚が相手に対して強まります。正面からの目線を気にする必要もないため、普段よりも親近感を持って気兼ねなく話せるようになります。フラットな関係性で、ポジティブに会話できる。これもウォーキング・ミーティングの意外なメリットです。


■その他参考記事
ウォーキング・ミーティングの留意点について解説した、ハーバード・ビジネス・レビューの記事です

ウォーキング・ミーティングをおススメする7つの理由について解説された記事です

ワークスタイル研究所

2017年創設。ワークプレイスを基軸とした新しい働き方に関して、調査・実践研究・発信を通した研究活動を担っている。ワークスタイルコンサルティングや先端的な働き方や働く環境を紹介するオウンドメディア『WORKSIGHT』の発刊を行う。

作成/ワークスタイル研究所(なんか変化より転載)