リサーチ
緊急事態宣言下におけるワーカーの意識
宣言の再発令で危機感はどう変わった?
2回目の緊急事態宣言が発令され、再び制限された環境下で働くこととなったワーカーは、どんな意識で仕事をしているのか。新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中で、首都圏企業に勤めるワーカーを対象にコクヨ株式会社が実施したWEBアンケート調査の結果を解説する。
コロナ禍の今だからこそ メンバーの自己効力感を高める工夫を
緊急事態宣言下でもモチベーション高く働くために必要な環境や要因を挙げてもらったところ、1位は「多様な働き方を可能にする制度」でした。 緊急事態宣言下でさまざまな行動が制限されるなかで、働く環境においては選択できる自由が強く求められていることがわかります。少しでも仕事に適した環境をワーカーが自ら見つけたい、と考えていることの表れではないでしょうか。 注目したいのは、「仲間からの信頼(頼られる)」や「お客様からの期待」「仲間との団結力・結束力」「同僚との協業」といった項目が上位を占めたことです。この結果を見ると、単なるコミュニケーションではなく、「頼られている」「期待されている」といった自己効力感がワーカーのモチベーションをアップさせることがわかります。 新型コロナウイルスによりテレワークが増えてくると、ワーカーの自社に対するエンゲージメントは下がりやすくなるといわれます。マネージャーは、メンバーの承認欲求を満たすコミュニケーションを心がけていく必要がありそうです。
ワーカーが期待するのは 経営陣が具体策を明確に示すこと
多くの企業では、経営陣や上司が年始挨拶と共に今後の方針や施策などを発表します。イレギュラーな事態が続出した2020年が明け、2021年の年始に、ワーカーは経営陣・上司の挨拶に何を感じ、どんな期待を寄せたのかを聞いてみました。 ワーカーの3割は、テレワークの導入や推進、新しい人事評価制度といった新しい働き方を実現するための施策に期待を寄せていることがわかりました。ここで特徴的だったのは、ロードマップを含めた具体的な施策を評価する傾向が強かったことです。 一方で気になったのは、「期待できそうなことはない」「経営陣・上司からの発信はなかった」と答えた人がそれぞれ2割いたことです。緊急事態宣言下で、業績低迷や働き方の変化に不安を感じているワーカーは多数います。企業として現状の課題を打開する具体策を強く発信していくことで、ワーカーの期待感は高まるのではないでしょうか。
コロナ禍が自己成長のチャンスの時期に
2021年に仕事で「頑張りたい・チャレンジしたいこと」を質問したところ、もっとも多かった意見は「チャレンジしたいことはない」でした。 緊急事態宣言下で行動が制限される中で、「コロナ対応で目一杯」「会社の業績低迷で先のことが考えられない」など、直近の未来に不安を抱く人は多いでしょう。加えて、長期間にわたるテレワークで周りからの刺激が得られにくいこともあり、ワーカーは「新しいことに取り組みたい」と感じる意欲を持ちにくくなっているのかもしれません。 しかしこのような状況下でも、「新たな資格取得」や「副業へのチャレンジ」など、自身を取り巻く状況を打開するため新たな資格取得に取り組もうとする人や、現業に役立つ「社会情勢や業界の情報収集」「人脈・ネットワークの拡大」を頑張ろうと考える人も一定数みられました。いずれの項目にも、自身を成長させていこうとする意思が感じられます。 調査全体を通じて感じたのは、緊急事態宣言下の2021年初頭、自分の仕事や生活に強く意識を向けるワーカーが多くみられたことです。ワーカーが「個」を意識するのはよいことである反面、自社へのエンゲージメント低下につながるおそれもあります。 企業は個々のワーカーをまとめ上げるために、感染予防に配慮した安心安全なオフィスやルール・制度づくり、働きやすさを向上させる具体的な取り組み、従業員の成長を後押しする施策などを早急に進めていく必要がありそうです。
実施日:2021.1.12-13実施
調査対象:社員数500人以上かつ首都圏(1都3県)の企業に勤めているワーカー
ツール:WEBアンケート
【図版出典】Small Survey「2021年の始まり・緊急事態宣言再び」
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。