リサーチ
ワーキングマザーが働きやすい会社とは
上司や同僚との関係性がポイント
※『ワーキングマザーの働きやすさに関する調査』は、マイナビ転職が2021年3月に、小学生未満の子供を持つ20代から40代の女性会社員(正社員)・公務員800人を対象に実施。
ワーキングマザーが 正社員として働き続ける意義
「男性は仕事・女性は家庭」という考え方はもう古く、今は女性が出産・育児をしながら働くことが一般的な時代。しかし、働く女性は増えているものの、現実的には仕事と家庭の両立が難しく、出産・育児や介護を機にキャリアを諦めた女性も少ないのではないだろうか。 しかし、新型コロナウイルスの影響で経済状況が悪化している今、夫の収入だけが家計の主軸になっていることへの不安や、安定志向の高まりによって、「正社員で働きたい」と希望する女性が増えているようだ。また、テレワークの普及によって、出産・育児後も正社員として働き続けられるのではないか、という期待も高まっている。 少子化や生産労働人口の減少が深刻化するなか、ワーキングマザーが働き続けられる環境をつくることは、企業だけでなく日本社会全体にとっても、非常に重要な課題といえる。 当記事では、調査に寄せられた生の声をもとに、ワーキングマザーが働きやすい会社・環境について考える。
「働きやすさ」の平均点は69.6点
調査で「今の職場の働きやすさ」を100点満点で聞くと、平均は69.6点。中小企業(平均65.6点)よりも、大手企業(平均73.6点)のほうが、やや高い結果であった。大手は中小よりも福利厚生の面で充実している場合が多く、産休や育休はもちろん、時短やフレックスタイム制など柔軟な働き方に力を入れている企業も多いことが、「働きやすさ」に影響していると考えられる。
利用している制度 利用できていない制度
現在利用している制度と、利用したいと思っているのに利用できていない制度について、大手企業と中小企業に分けて集計した結果を見る。 意外にも、時差勤務・フレックスタイム制を「利用できていない」割合は、中小よりも大企業のほうが高い。 各制度を利用できない理由をフリーアンサーで聞いたところ、「時差勤務・フレックスタイム制」は、業務内容上利用が難しい、ほかの制度との併用ができないなど、制度上の問題が主な要因。 対して「時短勤務」は、上司や周りの理解が得られない、人手不足など、職場環境が大きく影響しているようだ。制度を利用することによって、給与減になってしまうこともハードルになっていた。 また、「男性の育児休暇」については、大企業と中小企業の両方で「利用できていない」が「利用している」を上回り、今後の大きな課題といえる。2021年6月3日、「出生時育児休業(男性版産休)」新設の改正法が衆院本会議で可決、成立。2020年10月時点で13.4%だった男性の育休取得率を、2025年までに30%まで引き上げる狙いがある。男性の家事・育児への参加は、女性の働きやすさにも大いに関わりがあるため、今後の動向を注視したい。
働きやすさと職場環境 「上司との関係性」が重要
現在の仕事のしかたや人間関係についての回答を、前述の「働きやすさ」の点数別に分けた集計では、興味深い結果が出ている。 働きやすさの点数が特に高かった(90点~100点)層は、「同僚との人間関係が良好(70.7%)」「上司との人間関係が良好(62.6%)」「上司に相談しやすい環境である(60.2%)」と回答した割合が高い。一方、働きやすさの点数が低かった層(0~49点)では、上司との人間関係に関する回答がいずれも5%を切っている。 時短やフレックスなどの制度の整備も大事だが、制度があることと利用しやすさは別問題だ。制度があっても上司の承諾なしに利用はできないし、渋々の承諾では利用するワーカーは居心地の悪い思いをする。 また、子育て中は、子どもの行事に参加するための休暇の取得や、子どもの病気や怪我による突発的な休暇や早退もあり、そのたびに上司への報告が必要になる。そのため、上司との関係性が良いことは、ワーキングマザーのストレスを大幅に軽減すると考えられる。
皆が支え合う職場こそ 理想的な環境
ワーキングマザーの働きやすさを実現するためには、制度の整備だけにとどまらず、その制度が利用しやすい環境であること、制度から漏れるさまざまな事柄(突発的な早退など)に対する、会社や上司の理解が不可欠だ。 自身が「働きやすくなる」と感じる上司・同僚の振る舞いとしては、以下のような回答が挙がった。
- ・子どもを優先するよう一言があれば働きやすい
- ・子どもがいても、他の同僚と平等に見てくれること
- ・急な休みの時に嫌そうな顔をしない
- ・「カバーできるから安心して休んで」などの声かけ