リサーチ
コロナ禍と働き方改革で注目されるUIターン
魅力は大きいがハードルも高い
※『UIターン転職に関する意識調査』は2020年11月に、株式会社ビズヒッツが20代でUIターン転職を経験した男女119人を対象に実施。
UIターン転職とは
人と産業が集中する都市部は、求人や職種の選択肢が多く、給料も地方より高水準。交通などの利便性が高い、娯楽施設が多い、都会が持つ華やかなイメージも大きな魅力だ。また、大学や専門学校も都市部に多いため、進学や就職を機に都会に出る若者が後を絶たず、都市部への人口集中は戦後から長い間続いている。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大によって、都市部に居住することが人口密度の点でデメリットになってしまった。これまでは、都市部への人口集中による社会課題として、都市部の高齢化加速や地方の過疎化などが指摘されてきたが、感染リスク増という喫緊の課題が加わった形だ。 そのなかで今、「Uターン」「Iターン」「Jターン」が注目を集めている。
- ・Uターン...故郷から都会に移住した人が、再び故郷に戻ること
- ・Iターン...都市部から出身地とは違う地方に移住すること
- ・Jターン...故郷から都会に移住した人が、故郷に近い地方都市に移住すること
8割以上がUIターン転職に満足
調査では20代ワーカーの83.2%が、UIターン転職をして「良かった」と回答し、満足度が高いことがわかった。良かった理由には「家族の近くにいられる」や「地元の友人に会える」など、親しい人が近くにいることが大きな要因のようだ。故郷に戻るUターンや、故郷に近い地方都市に移住するJターンの最大のメリットといえるだろう。 また、「仕事が充実した」の他、「生活が充実した」「ストレスが減った」など、心身にも好影響があるようだ。理想的なワークライフバランスを実現するために、UIターンは有力な選択肢の一つといえるかもしれない。
UIターン転職の 真の魅力
UIターン転職をした理由の1位は「家族の事情」。「金銭的な問題」「都会が合わない」「結婚・離婚のため」が同率2位だった。自ら望んで地方移住を決めたワーカーよりも、やむを得ず移住したワーカーのほうが多いことがわかった。 興味深いのは、自らが望んだUIターン転職でないにもかかわらず、結果として満足度が高いワーカーが多いことだ。移住ありきで考えると、職探しの苦労やデメリットが一番に頭に浮かび不安になりがちだ。ただ、生活の充実やストレス減など、実際に暮らしてみることで実感できる利点も多いことが調査からもわかる。地方だから得られた充足感が仕事にも好影響を与える、ワークライフバランスの向上がUIターン転職の一番の魅力のようだ。
UIターン転職のリスク
20代のUIターン経験者では、満足度が高く多くのメリットも期待できることがわかったが、当然UIターンのリスクやデメリットもある。自由回答では以下のような意見が寄せられた。 【収入が減る】 ・給料が格段に下がった(27歳 男性) ・お金をあまりもらえない仕事内容が多いことに気づいた(25歳 男性) もちろん例外もあるが、一般的に都市部に比べて地方の賃金相場は安い。家賃相場も安く、また実家暮らしを選んで住居費を下げれば、全般的に生活費を抑えることは容易だが、給料の額が仕事のモチベーションに直結する人にとっては不満の種になるだろう。 【仕事がない・キャリアを活かせない】 ・選べるほど仕事の種類がなかった(25歳 女性) ・免許がないと就職先がなかった(26歳 女性) 地方は都市部と比べて企業数が圧倒的に少ないため、求人数が少ないのはもちろんのこと、業種や職種も限られている。そのため、都市部から地方への転職の場合、キャリアを活かせず収入減になることも、往々にして起こり得る。また、地方は車社会なので、免許がないと仕事に就けない、通勤できない、といったケースも多々ある。
地方分散促進へ 現状とこれからの課題
感染予防、そして働き方改革やワークライフバランスの充実といった観点からも、メリットが大きいUIターンであるが、現実的なハードルは高い。調査では8割以上がUIターンに満足していたが、調査対象の20代ワーカーには、そもそも転職へのフットワークが軽い、地方でも仕事を得やすいというアドバンテージがある。 企業数が少ない地方で中堅層が転職するのは簡単なことではないし、収入減や選択肢の少なさ、キャリアを活かせないなどの懸念は、年齢が上がるにつれて、より切実な課題となる。職歴が長いと給与もスキルも高くなっていることが多いため、年代が高いほどUIターンのリスク・デメリットは大きくなるのだ。また、配偶者や子どもがいれば、当人の希望だけでUIターンに踏み切ることも難しい。UIターンのメリットが語られて久しいが、いまだに地方分散が進まない原因の一端は、ここにあるのではないだろうか。 しかし、コロナ禍であらためて都市一極集中の危うさが浮き彫りになり、テレワーク推進によって職住近接の必要性も見直されつつある。「仕事がある場所に住むor住まいの近くに仕事を探す」の二者択一から、「住みたい場所に住みながら、やりたい仕事に就く」という、新しい働き方の可能性も広がっている。
これは、都市部に住みながら地方企業で働くことや、地方に住みながら都市部の企業で働くことが可能になることを意味する。人口減少に歯止めをかけたい地方では、移住支援なども含め、暮らしやすさや田舎の魅力を発信していく必要があり、人材不足に悩む地方企業は、都市部と差別化した地方企業ならではの特徴や強みをアピールしていく必要があるだろう。 【出典】株式会社ビズヒッツ『UIターン転職に関する意識調査』