レポート
オフィスの位置情報システムの実運用、1年間の記録!
WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS vol.10
2021年9月16日・17日にコクヨが開催した『WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS』から、株式会社ビーキャップ代表取締役社長の中垣雄氏が登壇した「オフィスの位置情報システムの実運用、1年間の記録!」の様子をレポート。オフィスにおける位置情報システム導入のメリットや運用事例についてコクヨのコンサルタント伊藤が話をうかがった。
オフィスの位置情報システム『ビーキャップヒア』とは?
セミナーの最初にはビーキャップ代表取締役の中垣氏が、同社で開発・販売している位置情報システムの特徴を説明した。 中垣:「弊社では『あらゆる現場を可視化する。』というミッションのもとに、ビーコンを活用した位置情報システムサービス『ビーキャップヒア』をご提供しています。ちなみにビーコンとは、Bluetoothの電波を約1秒間に1回ずつ出す発信器です。ビーコンから発信された電波を専用の端末やスマートフォンが受信すると、その端末やスマホの位置情報がサーバーに送信されます」 「これまでにも、位置情報を示すためのテクノロジーは存在しましたが、導入に手間とコストがかかるのが難点でした。その点、私たちの開発した『ビーキャップヒア』などビーコンを使ったサービスは、比較的手軽に、安価に導入できるのが特徴です」 中垣:「このサービスの機能は、大きく分けて2つあります。まず、従業員がオフィスや工場など施設内のどこにいるかを、PCやスマホから簡単に確認できる機能です。 もう1つは、データ解析の機能です。保存された位置情報のデータをもとに、施設ごとの利用率や部署ごとの交流頻度、時間帯別の人の配置などをグラフなどの形で可視化することが可能です。ダッシュボードも弊社で用意させていただくので、お客さまは目的に応じて必要な解析データを入手いただけます」
フリーアドレス化に伴う課題や感染症対策に対応
『ビーキャップヒア』のサービスは、日本全国のオフィスや工場、建設現場、病院などさまざまな施設で活用されている。2020年12月には累計130社、ユーザー数では7万ユーザーを達成した。 中垣:「多くの企業様では、フリーアドレス導入に伴って『従業員がオフィスのどこにいるかわからない』という課題が浮上しています。オフィスが複数階・複数棟にわたる場合はなおさら、人探しの問題は深刻です。この課題に対するソリューションとして、『ビーキャップヒア』への注目が高まり、2021年は前年度と比べて約2倍のお問い合わせをいただいています」 中垣:「『ビーキャップヒア』では自宅やサテライトオフィスからも、オフィスに誰が出社しているかをスマホなどで簡単に確認できます。 また、新型コロナウイルス対策として『ビーキャップヒア』をご活用なさる企業様も増えています。オフィスで感染者が出たときに、濃厚接触者(感染者と一定時間以上一緒に過ごした人)を割り出すのに役立てていただいています。ログを解析すれば直近2週間程度の濃厚接触者を簡単に特定できるので、弊社でリスト化してお渡ししています」
コクヨにおける位置情報サービス導入状況
続いてコクヨの伊藤が、2021年春に開業した新オフィス『THE CAMPUS』における『ビーキャップヒア』の活用状況や現段階で見えてきた効果などを語った。 伊藤:「コクヨでは『THE CAMPUS』の開業にあたって、『ビーキャップヒア』を導入しました。コクヨ全体としてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するとともに、新オフィスのコンセプト『働こう。街で、チームで』を実現するために、チーム(従業員や社外パートナー)・オフィスを訪れるお客さま・情報をスマートフォン1つで手軽につなぎたいと考えたためです」 「ABWのスタイルで働く社員の所在確認はもちろん、来客情報の取得や動画情報の発信などにも活用しています。また、従業員が安心してオフィスを利用できるよう、密情報を可視化したうえでサイネージシステムに表示できる機能も付加しました」 伊藤:「『ビーキャップヒア』の導入から6か月経った2021年5月、従業員745人を対象に、活用状況や使用感に関するアンケート調査を実施しました」 「その結果、『人の居場所を探す機能に満足していますか?』という質問にポジティブな回答をした人が85%、『相手の居場所を探せることでコミュニケーションがしやすくなったと感じますか?』という質問には76%みられました。両項目とも『どちらでもない』を含めた数値ですが、このサービスを使いこなしていることがうかがえることから、好結果を得られたと私は捉えています」
オフィスの利用状況を見える化して次の一手を考える
伊藤:「従業員の位置情報に加えて、コクヨではビーキャップ様とシステム連携して多様なデータを入手し、複数あるオフィスごとの出社人数や、フロアごとの時間別滞在者数など、オフィスの利用状況把握に取り組んでいます」 「また、CSVデータをコクヨでヒートマップ(データの個々の数値を、色や濃淡で表現した可視化グラフの一種)化し、フロアごとに「どの施設が使われているか」も見える化しています。 データ解析をしなくても、なんとなく『8階はよく利用されているが、6階は活用されていない』といった感覚値は社内で共有されていました。しかし、ヒートマップやグラフで目に見える形にすることで、『もっと各階の活用度を上げるにはどうすればいいか』など次の一手を考えるきっかけになると考えています」
導入の目的を明確に伝えることで監視不安は払拭できる
最後は質疑応答の時間にあてられ、セミナー視聴者からの質問に、中垣氏と伊藤が回答した。 Q.:「ビーコン導入を検討していますが、社員から『監視されている気がする』という声が上がっています。利用してもらうにあたって、心理的不安をどのように解消すればよいですか?」 中垣:「確かに、導入いただいた多くの企業様でも、約1割の従業員の方は監視不安を理由に使っていないようです。しかし、個人の動きにフォーカスするわけではないことをしっかり説明し、新型コロナ感染予防対策の重要性や、オフィスの利用状況を正確に把握する目的を伝えることで、不安は払拭できるのではないでしょうか」 伊藤:「『ビーキャップヒア』はクラウドサービスなので、お客さまのニーズや時代の変化に合わせてアプリケーションを進化させていけるのがメリットですね」 最後に伊藤が、位置情報サービスの重要性についてコクヨの視点を語った。 伊藤:「私たちは、ABWやフリーアドレスを実現するために、位置情報サービスは不可欠だと考えています。もちろんこのサービスがフィットするかどうかは企業様の文化によって異なりますし、社員にスマホが支給されているかどうかも使い勝手が変わります。 私たち自身は、実際に利用してみて、自分の目が届かない範囲でも仲間の居場所が可視化されるようになってとても便利だと感じています。また、ヒートマップなどを使ってオフィスの利用状況を目に見える形にすることで、新オフィスの課題を知るきっかけも得ることができ、位置情報サービスの重要性と可能性を実感しています」
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