レポート
情報×人のつながり創りによって組織の生産性が向上!
WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS vol.6
2021年9月16日・17日にコクヨが開催した『WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS』から、株式会社NTTデータの立見博史氏と田村賢之氏が登壇した「情報×人のつながり創りによって組織の生産性が向上!」のセミナーの様子をレポート。DXの領域にありながら「人」を介した知の共有化の取り組みなどについてコクヨのコンサルタント坂本と語り合った。
登壇者
■立見博史氏(株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 デジタルワークプレイス推進室 課長) ■田村賢之氏(株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 デジタルワークプレイス推進室 ナレッジアーキテクト)
社員が枠を超えて自由かつ有機的に繋がり合う Knowledge Driven Companyへの変革
セミナーの冒頭では、コクヨの坂本から「知の共有化やナレッジマネジメントは20~30年ほど前から言われてきた組織運営のキーワードだが、昨今はコロナ禍で情報共有が進みにくく生産性が低下してしまうという課題が表出してきており、改めて知の共有化が重要視されている」という現状と課題が提示された。これを受け、NTTデータの立見氏が同社の取り組みについて、その背景から紹介した。 立見:「NTTデータグループは国内外で多様な事業を展開しており、その領域は日本国内では公共・社会基盤分野、金融分野、法人・ソリューション分野、海外では北米やヨーロッパ、中南米、アジアまで多岐にわたります。従業員数はグループ全体で13万人以上に上り、顧客の業種もさまざまで、近年はドメインを超えて事業をつないでいくようなビジネスや他の業界に応用して展開するビジネスも増えてきています」 「当グループでは以前からナレッジマネジメントに取り組んできましたが、既存のビジネス領域を超えた価値創造への期待、グローバルコンサルファームの知見とスピードの脅威といった外部環境が変化するなか、従来の縦割りの構造による(顧客の期待や競合の脅威に対する)対応の遅れが課題になっていました。 そして、改めてグループ横断でナレッジシェアを強化しないと今後のビジネス展開において遅れをとってしまう...という危機感のもと、よりスピード感をもって新しい提案ができるよう、グループ全体の経営基盤として情報共有インフラ『NTT DATA Digital Workplace(以下DW)』を構築することになったのです(2018年)。知の共有を『ボランティアでやるもの』から『やって当然の企業カルチャー』にするべく、グループ全体の技術支援を行う部署としてデジタルワークプレイス推進室が立ち上がりました」 坂本:「以前は、(知の共有が)できたらいいよね、という感じだったわけですね。それを、組織のインフラ、文化、ポリシーみたいなものにしていくと。推進力、そして覚悟を感じますね」 立見:「『DW』のコンセプトは、『社員が組織や会社、地域を超えて自由かつ有機的に繋がり合うKnowledge Driven Companyへの変革』です。人と人とがつながり合った先に、コラボレーションして新しいビジネスを生み出すことをめざしています」 坂本:「知識や情報の共有にとどまらず、『人と人とをつなぐ』というコラボレーションに重きを置かれた理由は?」 立見:「しっかりと人までつながないと、新結合は生まれず、新しい事業には結びつきにくいからです。Knowledge Driven Companyへの変革を実現するために、私たちはナレッジマネジメントの状態についてレベル0から3まで4段階のレベルを設けています。基盤となるレベル0は、『円滑なコミュニケーション環境の提供』。チャットツールなどのデジタルツールの整備・活用の推進です。そのうえで、レベル1には、『Know-Whoと既存コンテンツの共有』を挙げています」 「Know-Whoというのは、『誰が(それを)やっているのかがわかる』という意味。弊社のグループ会社が開発した『knowler』というナレッジマネジメントソリューションツールを導入し、コンテンツやノウハウの背景にある『誰が』という情報を検索・共有できるようにしています。さらに、『永続的なベストプラクティスの創造と活用(レベル2)』『"繋がる・支え合う"働き方・文化の浸透(レベル3)』へと、ステップアップしていくことがカギだと考えています」
知の共有、そして新たな価値の創造には、 システムと人的オペレーションの両輪が不可欠
坂本:「データベースの検索では過去の知の共有にとどまりがちですが、人と人とがつながることで新しい価値を生み出すという点に大きな魅力を感じます」 立見:「システムだけ整備しても活用は進まないという過去の反省から、『DW』ではシステムとオペレーションの両輪で施策を進めています。先述したシステム『knowler』では、社員やチーム、コンテンツの検索のほか、ベストプラクティスや提案書テンプレートの提供、コンテンツ配信などが可能で、欲しい情報や社内の有識者がすぐに見つけられます。 また、ある社員やチームが提供したコンテンツをどこの誰が共有しているかも参照できるので、関係する人やチームにコンタクトが取りやすくなり、新しいコラボレーションが生まれやすくなっています」 立見:「一方、ツールだけでなくナレッジ共有を支援するオペレーション部隊として、『Knowledge Management Office』というチームを設けています。このチームに所属する私たちがプロジェクトの事例紹介や有識者紹介、提案書のデザインリメイク(コクヨのナレッジワークサポートサービスを活用)などをサポートしています。そうすることで検索システムだけでは見つからない情報にリーチする手段として現場のお役に立つことができています。お客様から依頼を受けた社員は、この仕組みを活用して、情報収集から資料作成・提案までスムーズに行うことができます」 坂本:「ナレッジマネジメントに特化したシステムやサービスって、失敗しがちなんですよね。こうして業務のなかで一連の流れとして使われるものになっているのはすばらしいですね。また、先日御社のニュースリリースでこのノウハウや仕組みを社内だけでなく、外部にもソリューションとして提供されることになったと拝見しましたが、どのようなソリューションになるのでしょうか?」 立見:「『knowler』については、『情報×人のつながり創り』を支援するツール、Knowledge Driven Companyへの変革を支援するツールとして、今年から外部への提供も始めました」 田村:「システムだけ導入して、あとはご自由にご利用くださいと任せてしまうと、活用の度合いに個人差が出て失敗しがちです。当社の過去の取り組みでも、そうでした。ですので、定着するまでは人的サポートも行います」 坂本:「検索システムだけじゃダメだ、人と人とのつながりが必要だというのは、システム会社として英断ですよね」 田村:「ナレッジマネジメントは、本来は生産性向上や新しい価値創出の手段であるはずですが、つい導入自体が目的になりがちです。立派な箱(=システム・仕組み)をつくっても、放っておくとごく一部の人以外には使われずに廃れてしまいますから、やはり人の介在が不可欠なのです」
ユーザーである社員への「共感」からスタート。 コンセプトありきのデザイン思考で構築する
坂本:「私自身の経験から、ナレッジ共有支援のためのシステムを導入しても浸透しないケースが少なくなく、人を介することや情って大事だなと感じてきました。NTTデータさんの場合は、どのように全社に広げていったのでしょうか?」 田村:「デジタルワークプレイス推進室は私たち含めて10人ほどです。立ち上げ当初は5,6人で、それでは無理だと、社内のイノベーター、アーリーアダプターを探して、対面でヒアリングをさせてもらいました。そうするうちに、理解者・協力者が増えて、クチコミで広がっていった感じです」 坂本:「便利だから使ってくださいと社員に直接訴えるのではなく、アーリーアダプターを介して広めることで、この人がいいと言うならいいんだろう、使ってみようと思わせる。そこには、『(情報の共有や伝播には)人が大事だ』という思いがあったのでしょうか?」 立見:「自分たちだけの意見や感覚だと偏りが生まれるので、初期にはたくさんの社員の声を聞きました」 田村:「本社社員はもちろん、海外を含めグループ会社社員にもインタビューしました。そうやって話を聞いていくなかで、ドキュメントレベルだと全体像の3割くらいしか情報を把握できない、やっぱり人と人とがつながることが大事だよね...と方向性が定まっていきました」 坂本:「あらゆる組織改革において言えることですが、担当者は外部の情報や事例は集めるものの、社内のヒアリングをあまりしない。たくさんの社員に話を聞いたというのは、新しいですね。普段から、社員の声を聞くという企業文化があるのでしょうか?」 田村:「そういうわけではなかったのですが、近年、デザイン思考が広がっていますよね。デザイン思考では、ユーザーや市場の『分析』ではなくユーザーへの『共感』が始点になります。これを僕らもやってみようと...」 立見:「当初は『knowler』のシステムはなく、『情報×人のつながりづくり』というコンセプトだけだったのですが、プロジェクト開始時点にまとめたコンセプトは、今あるものとほとんど同じでした」 坂本:「システムありきではなくて、コンセプトありきだったわけですね。プロトタイプ状態で『knowler』との出会いがあり、こうして実現したと」 田村:「はい。13万人従業員がいると、同じようなことを考えている人と、理論的には3ステップくらいでつながれるはずなのです。『knowler』は、それを可能にするシステムです」 坂本:「ちなみに、この仕組みの1つの機能としてコクヨのナレッジワークサポートサービスを導入いただいているのですが、このサービスをお知りになったきっかけは何だったのでしょうか?」
情報共有のシームレスな仕組みを、 ツールではなく組織のインフラとして整備する
坂本:「コロナ禍で対面での情報共有が難しくなっているなか、NTTデータさんの事例は、大手企業内のナレッジ共有という課題に対する答え・選択肢の一つだと思います。今後はどのようなビジョンを描いていますか?」 立見:「海外も含めて、『DW』の活用をグループ全体に広げていきたいと考えています。海外となると言語の課題もありますが、あくまでも全体で取り組むことに重きを置いて進めたいです」 坂本:「『DW』のような仕組みを、ツールではなく組織全体のインフラにすることが大事ですよね。 例えば、コロナ禍により『知り合いではない社内の誰かにちょっと教えてもらう』ことが難しくなっているなか、対面かどうかよりもシームレスさが重要になるのだと思います。NTTデータさんの事例はそのヒントとなったのではないでしょうか。本日はありがとうございました」 立見・田村:「ありがとうございました」
【図版出典】「情報×人のつながり創りによって組織の生産性が向上! 情報と人を組み合わせた知の共有化でデジタル時代に求められる価値創造を実現」セミナー投影資料- 社員の個性を掛け合わせ企業競争力を高める本社移転!
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