リサーチ
コロナ禍の大学生。友だちがいないと学びも充実しない?
友だち関係は「成長実感」に多大に影響
2年を超えたコロナ禍は、大学生の学びや生活に変化をもたらしている。具体的な影響を、『第4回大学生の学習・生活実態調査』から考察する。
※『第4回大学生の学習・生活実態調査』は、株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所が、2021年12月に全国の大学1〜4年生4,124人を対象に実施。
2020年度入学生の4割が「成長実感がない」と感じている
この調査は、2021年12月時点の大学1〜4年生を対象に高校時代の学習や大学入学後の生活と学習の様子、人間関係、留学、 就職、学びに対する意識や将来観・社会観など、幅広い内容を調査している。その中で、今回の調査結果として特筆すべき事項として挙げられたのが、大学生の成長実感と友人関係についての変化だ。 まず、成長実感について、大学生活における成長実感を「実感しない」と回答した学生(「あまり実感しない」「まったく実感しない」の合計)は、大学生全体で28.6%。前回調査が実施された2016年から2.1ポイント増加した。 学年別に見ると、2年生(2020年度入学)が39.6%と最も高く、2016年調査から8.0ポイント増加した。他の学年は2016年調査と大きな差はなく、2020年度入学生のみ成長実感を得られていない学生の割合が突出している。
「友だちがいない」という学生も、2020年度入学生で顕著に増加
次に、大学内に「悩み事を相談できる友だち」「学習やスポーツで競い合う友だち」が「いない」と回答した学生は、大学生全体で前者は24.6%、後者は49.4%で、2016年調査からそれぞれ5.4ポイント、9.2ポイント増加した。 学年別に見ると、全学年で増加しているが、とくに2年生で顕著で、「悩み事を相談できる友だち」が「いない」という学生は29.1%(前回から9.1ポイント増)、「学習やスポーツで競い合う友だち」が「いない」という学生は52.7%(前回から15.1ポイント増)であった。 2020年度は、新型コロナウイルス感染症の流行の始まりの年度であり、入学式の中止・延期はもとより前期・春学期の開始時期の延期や、対面授業の中止と授業のオンライン化など、2019年度以前の入学者に比べて学び方が大幅に変わり、友人を作る機会も限定的となった。それらが影響していることがうかがえる。
友人数が「多い群」ほど、学びの充実や成長実感のある学生が多い
調査元のベネッセ教育研究所によると、前回調査までの3回にわたる調査で、友人関係や教員・職員との関係が、学生の大学へのコミットメントや学習意欲に影響があることがわかっているという。今回の調査においても、友人の数が多い群ほど「学びの充実」をもたらし「成長実感」につながっているという結果が出ている。 具体的には、学びの充実度について、友人数が「少ない群」「中間群」「多い群」別に見たところ、「とても充実している」「まあ充実している」の合計は、「少ない群」65.3%、「中間群」77.4%、「多い群」84.5%と、多い群ほど高かった。 また、成長実感についても、「とても実感する」「まあ実感する」の合計は、「少ない群」61.1%、「中間群」73.7%、「多い群」80.4%と、友人数が多い群ほど高かった。
オンライン授業の理想の割合を「半分以上」とする学生が約半数
コロナ禍で授業のオンライン化が進んだが、2021年12月時点の対面授業とオンライン授業の比率は、7割以上対面と回答した割合が48.5%、対面とオンラインが半分ずつくらいが17.3%、7割以上がオンラインの合計が31.0%だった。 また、対面授業とオンライン授業はどのくらいの割合で行われるのが良いと思うかという質問に対しては、7割以上対面が良いとの回答の合計が半数以下の47.6%。半数以上の52.5%の学生が、オンライン授業が「半分以上」であることを理想としていた。 なお、オンライン授業のメリットとして上位に入っていたのは、「通学がないので自由時間が増える」「自分の好きな場所で受講できる」「コロナ感染が予防できるのが良い」「自分の好きなペースで学習できる」「顔を出さなくてよいので楽」など。一方、デメリットとして上位に入っていたのは、「一方的な授業が多い」「対話や議論がしにくい」などだった。 これらの結果から、利便性の面でオンライン授業にメリットを見出している学生が多いことがわかる。他方で、学習効果を高められる授業形式としては、「対面授業」を「かなり効果的」「まあ効果的」と評価する学生の割合が62.4%と、「オンデマンドによる配信授業」「リアルタイムの遠隔授業」「教材提示による授業」に対して同様に評価している学生の割合(それぞれ35.4%、33.4%、28.9%)に比べて高い。
2020年度入学生への支援が課題
調査結果を受けて、ベネッセ教育研究所は、コロナ禍の影響を最も受けた2020年度入学生への支援の必要性を提言している。2022年3月には、文部科学省が2022年度の授業を原則対面で行うよう通知を出し、キャンパスに通って学べる状態にはなっているが、大学3年生を迎えている2020年度入学生の成長実感をどのように醸成していくのか、また、企業をはじめとした社会が2020年度入学生をどのように受け入れていくのかは、調査元が指摘するように課題だろう。 また、成長実感がないという学生の割合の高さも、友だちがいないという学生の割合の高さも、2020年度入学生において顕著だが、大学生全体で見ても2016年調査に比べて増加していることから、コロナ禍により授業形態が変わったことなどはマイナスに影響していると言えるだろう。 他方で、学生たちはオンライン化の恩恵も感じており、対面授業に比べて学習効果が落ちることを実感しながらも、オンライン授業を望む学生が一定数いる。その理由として読みとれるのは、オンライン授業によって自分の時間を自分でコントロールし、充実させることができるメリットの大きさだ。 個人にとって心地よい学び方と学習効果、個人の時間の充実と人間関係の広がりや成長機会の消失、このような相反する価値がオンライン授業やコロナ禍の大学生活を巡ってせめぎあっているのが、現在の状況だと思われる。 これからはリアルとオンラインを適切に使い分ける時代になることは間違いないが、今まさに最適なバランスを探っている最中であることが、この調査からもみえてくる。大学には、それぞれの価値や効果を慎重に受け止め、対処していくことが求められているだろう。