リサーチ
日常生活でワーカーが感じる"幸せ"
幸せ感と仕事のパフォーマンスの相関関係は?
VUCAの時代といわれる現在、不安定な社会情勢やコロナ禍の中で、多くの人がストレスを感じやすい状況が続いている。その中で、日本のワーカーはどんなことで、どれだけ幸せを感じているのか。また、幸福感の高低と仕事のパフォーマンスに相関関係はあるのか。ワーカーが感じる幸せ感について、コクヨが実施した調査の結果をもとに解説する。
「幸福感が高いときは仕事のパフォーマンスも高い」と 感じる人が7.5割
「あなたは幸福感が高いと感じているとき、ご自身の仕事のパフォーマンスは高いと思いますか?」と質問したところ、「とてもそう思う」または「少しそう思う」と回答した人が全体の75.1%に上りました。4人中3人が、幸福感と仕事のパフォーマンスとの間に相関関係があると実感しているのです。 つまり、ワーカーの幸福感を上げることは組織全体の生産性向上にもつながりやすいと考えられ、企業は社員の幸せを向上させる方策を探っていく必要があるわけです。
ワーカーが日常生活で感じている幸せ・不幸せ
日常生活のさまざまな項目において、ワーカーがどれだけ幸せを感じているのか、5段階のうち「幸せ度」はどのくらいなのかを調査しました。 まず注目したいのが、「日々の生活を総合的に見たとき」の幸せ度です。「幸せをとても感じる」「どちらかと言えば幸せを感じる」と回答した人の割合が、合計で6割未満にとどまっています。逆に考えると、4割超のワーカーは日々の生活において幸せを感じていないことになるのです。 それぞれの項目を詳しく見ていくと、ワーカーが感じる幸せの内容や抱える課題が見えてきました。
プライベート面で幸せを感じる人が多い
「幸せをとても感じる」「どちらかと言えば幸せを感じる」と回答した人の合計割合が高かったのが、「家族関係」や「プライベート」、「衣食住」といった項目です。つまり、仕事以外の項目で幸せを感じる人が多いことになります。
仕事で幸せを感じないワーカーが多数?
「仕事の種類・内容」や「社会的地位」といった仕事に関する項目では、幸せを感じる人は全体の4割程度にとどまっています。これらの項目に関しては、「どちらでもない」(幸せも不幸せも感じない)を選んだ人も約4割みられ、仕事に対してポジティブな感情を見いだせないワーカーが多いのではないか、と推測できます。
不幸せの要因は睡眠不足やストレス
「不幸せを感じる」「どちらかと言えば不幸せを感じる」と回答した人が目立つのが、「充分な睡眠時間の確保」や「時間的ゆとり」、「経済的余裕」、「精神的余裕」などの項目です。この結果から、時間に追われストレスを抱える人が一定数いることがうかがえます。
幸せ度を向上させる要因
「幸せを感じるのに大切だと思うこと」を3つまで挙げてもらい、男女別に集計しました。男女とも「経済的余裕」や「家族関係」を挙げた人が多かったものの、男女差が大きい項目もありました。女性の回答を見ると、「人間関係」や「精神的健康」「プライベート」「時間的ゆとり」の数値が、男性に比べて高かったのです。一方で男性は、女性と比較して「仕事の種類・内容」や「社会的地位」の項目を挙げる人が多くみられました。 この結果からは、男性はどちらかというと社会生活、女性は個の充実を求めていることがうかがえます。
幸せ度が上がるワークプレイス
「働く場所を自由に選べるとしたら、どこで働くと幸せ度が上がると思いますか?」と今回のアンケート対象者全員に質問したところ、「在宅」と回答した人が55.7%と過半数みられました。ただし、「自社オフィス」や「ワーケーション」と回答した人も一定数みられ、働きたい場所が多様化していることが見て取れます。 以上の結果をさらに、「普段オフィスのみで働いている人」「自宅やオフィスなど複数の場所で働いている人」に分けて集計してみました。 オフィスのみで働いている人は、「自社オフィス」と「在宅」を挙げる人がそれぞれ4割程度みられましたが、それ以外の場所を挙げた人はかなり少なめです。一方、ハイブリッド(自宅やオフィスなど複数の場所)、または自宅のみで仕事をしているワーカーの回答を見ると、「在宅で働きたい」という声が一番多いものの、ほかの場所にも回答が分散しています。 オフィス以外の場所で働いた経験が豊富なワーカーの方が「働く場所によって幸せ度は変わる」という実感を持っており、だからこそいろいろな場所が挙がっているのではないでしょうか。ひと口に「幸せ度が上がるワークプレイス」といっても、これまでの経験によって感じ方は人それぞれであることが読み取れます。
働く期間(いつまで働きたいか)
「働きたい」という意欲と実際に働く期間が一致すれば、ワーカーの幸せ度は高いと考えられます。そこで、「いつまで働いていたいと思いますか?」と聞いてみました。ちなみにここでいう「働く」は、「現在の勤務先に限らず、賃金が発生する労働」と定義しています。 回答を男女別に集計したところ、「働ける限りずっと働きたい」人の割合は女性の方が高いにも関わらず、「定年まで働きたい」「定年後の再雇用期間終了まで働きたい」と回答した人の合計割合は男性が大幅に上回っていました。この結果からは、男性は働くことを「企業」いう枠組みの中で考える傾向があり、女性は「人生の一部」ととらえやすいのではないかと推測できます。
幸せに関する将来の展望
自分の将来に対してどんな思いを抱いているかは、現在の幸せ度にも少なからず影響を及ぼすと考えられます。そこでワーカーに、「あなたの将来を考えたときに、どんな感情がわきますか?」と問いかけてみました。
仕事面で将来に期待感を持っていないワーカーが目立つ
「将来を考えたときにわく感情」を仕事面・プライベート面に分けて回答してもらったところ、仕事面では「とても楽しみ」と「少し楽しみ」と回答した人の合計が全体で3割未満にとどまったのに対し、プライベート面では約6割に達しました。逆に、仕事面で「とても不安」「少し不安」と回答したワーカーは約4割と多く、プライベート面では2割未満でした。 この結果からは、プライベート面ではワクワクを感じるものの、今後の仕事に対して期待感を抱けないワーカーの姿が浮かび上がってきます。
現在の幸せ感が弱い人ほど将来を不安視
前述の「ワーカーが日常生活で感じている幸せ・不幸せ」に関する質問では、「日々の生活を総合的に見たとき」の幸せ度を5段階で回答してもらっています。その結果と「将来を考えたときにわく感情」の回答をクロス集計し、現在の幸福感と将来への展望がどう関連するかを探ってみました。 大まかな傾向としては、仕事面でもプライベート面でも、現在の幸せ度が高い人ほど将来に対しての期待度が高いことがわかります。 また、仕事面とプライベート面を比較すると、全体的にプライベートに対するワクワク感を抱く人の割合が高く、仕事面では不安感を持っている人が目立ちます。特に、現在において「どちらかと言えば不幸せを感じる」「不幸せをとても感じる」という層の仕事面に注目すると、「将来がとても不安」と回答した人が全体の6~7割と非常に高い結果です。
まとめ
今回の調査でわかったのは、プライベートで幸せを感じているワーカーが多いのに対して、仕事に対する幸せ度が全体的に低いことでした。仕事に対して幸せを感じられないのは、「時間的な余裕のなさ」や「周囲の評価を得られないこと」、「自己成長が感じられないこと」などに原因がることが見えてきました。 人が幸せかどうかは、仕事や私生活におけるさまざまな要素のトータルバランスによって決まりますが、今回の調査結果から、ゆとりが一つのキーワードであることも見てきました。例えば、不幸せの原因として一定数の人が挙げた「充分な睡眠時間を確保できない」や「精神的健康が保てない」といった問題もゆとりがないからこそです。残業削減を推進したり、有給休暇をスムーズに取得させたりして社員の休養時間をしっかり確保することは必須でしょう。 また、より幸せな業務時間を過ごすための施策も求められます。幸せに働くための土壌づくりとして、例えばチーム内でほめ合う文化・サポートし合う文化を醸成するなどして、心理的安全性を確保することも効果的です。 企業として成長を続けていくうえでも、1人ひとりの幸せ度を高めるために、きめ細かい取り組みを探っていくことが大切です。
実施日:2022.8.26-26実施
調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー
ツール:WEBアンケート
協力:マクロミル
【図版出典】Small Survey 第43回「日々の生活の中での【幸せ】の感度」