ライフのコツ

2013.11.13

夫に協力してもらう。ちょっとしたコツ。

もう、ひとりで抱え込まない育児へ。

“イクメン”という言葉をよく耳にするようになった昨今。でも実際には、父親の帰宅は遅く、積極的に育児に関わりたくても、できない家庭がまだまだ多いのが現状。「もっと一緒に子育てしたい」「母親だって、悩みながら育児も仕事もしているのに……」と、父親をもっと育児に参加させたい、巻き込みたいと思っている母親も多いはず。そこで、今回は、自身も父親であり、育児をしてきた経験から、“夫と共に子育てするコツ”をおおたとしまさ氏に伺った。

縦社会を好む男性が、 もっと育児参加したくなる話術。
「お父さんが育児に協力的でない」「いわれたことしかやってくれない」といった悩みは、ほとんどの母親が持っているもの。特に時間がないワーキングマザーにとっては、パートナーの協力体制は重要な意味を持つ。そこで、そんなワ―ママの相談に、おおた氏は「子どもと同じように"I"メッセージで伝えて」とアドバイスをするそう。「男性も子どもと似ていて、いたってシンプル。自分の奥さんが困っている、悲しんでいる、悩んでいると分かれば、自分が守りたい! と思うものです」。

さらに、いわなくても通じ合っているはず......は、気持ちのすれ違いを生むもとだと話す。パートナーに対して"いわなくてもやってくれるだろう""気づいて動いてくれるだろう"と思うのは間違いなのだ。「男性は与えられた役割をこなすことが得意で、自分からやることを見つけ出して動くのが苦手なんです。女性は横の繋がりで広がる組織を作りやすく、誰もやっていない仕事を見つけ出して、そこを埋めながら組織運営するのが得意なんですね。でも男性は縦社会を好む生き物なんです」。縦社会を好む男性は、役割を与えられて、その中でスキルを磨くのが得意だから、家庭内でも役割を与えてあげることが大事なのだ。

「ただ、一方的に命令されるのも嫌がります(笑)。ちょっと面倒かもしれないが、"どう思う?""お父さんに○○してもらえると助かるな~"といった、相談口調で伝えていくのが、父親も一緒に子育てできる環境を作っていくコツだと思うんですよ」。
「まずは人として奥さんを認めていることを言葉にしています。その上で意見をし合う姿勢が大事ですね」とおおた氏は語る。
同じ考え方で子育てするなんて、 そんなことは出来るはずがない!
ただ、お互いに仕事を持っていると、育児について話し合う時間も相談する時間もなく、なんとなく子育ては母親の仕事と、暗黙の了解になっているパターンも少なくない。そのために母親自身が"私の育て方は合っているのか?""私の叱り方って酷いのかな?"とひとりで子育ての悩みを抱えることも多い。

「私は短時間で質の高い育児を行うコツをいろいろお伝えしていますが、実際に正解はないものです。だからこそ、多くの人が悩むんです。それに、子育てに関する書籍もたくさん出ていますよね。祖父母や近所の方々など、本当に多くの人が"自分はこれで成功した!"と思っていることを意見してきます。育児って、いろんなやり方がある、いろんな考え方がある、そういう幅のあるもんなんです」。

夫婦は同じ考えのもとに子どもを育てないと、子どもが混乱すると思い、どちらか片方の考え方に合わせてしまう、口出ししなくなる家庭もある。でも、おおた氏曰く「夫婦間で意見が分かれることは普通」という。

「違う人間なのですから、意見が分かれるのは当然ですよね。ひとつの方針に決めるほうに無理がある。僕は家庭内で違う考えがあることを知ることも、子どもによい影響を与えられると思っています。世の中にはいろんな意見があるんだ、あっていいんだということを、家庭という小さな社会で、まず学ぶのではないでしょうか」。

「カーテンや家具の色ひとつでもいい合いになるんですよ。そんな夫婦が子育てだけは意見が一致するなんてことはないでしょ」と、意見が違うことは当り前。だけど、思いを共有して欲しいと語る。
自身の子育て経験から、多くの書籍を執筆され出版されています。
上手な喧嘩であれば、 夫婦ゲンカも子どもの社会勉強。
「ときには夫婦ゲンカだって、子どもにプラスになっていると思いますよ。だから、真剣に家庭のことを考えて、ときにぶつかり合うことは、それは、それでいいと思うんです」夫婦ゲンカをしている姿を子どもたちには見せてはいけない......と思ってしまい、大切なことを話合えないより、きちんと話合うほうが、数倍も子どものためになっているのだ。「ケンカしても、ちゃんと仲直りをしますよね。その姿を見て、"ケンカしても仲直りできるんだ""ケンカしたら最後じゃないんだ"ということが子どもにもわかります。外での人間関係を築くためにも、上手なケンカを教えてあげていると思ったらいいんです」。

ただ、やってはいけないのが下手なケンカ。「自分の考えが正しい」と、結論が出るまで言い負かしたり、言い張ったり。とくに、仕事をしている女性は、仕事モードで自分の意見を通していきがち。相手を論破するこが最終目的になってしまうと、本来の目的を見失ってしまう。

「自分の意見や思いを伝えて、お互いに"そう思っていたんだ"とわかることが大事なのに、ヒートアップすると、つい勝つことに執着しちゃいます。話し合うときは、結論を出そうと思わないこと。お互いの気持ちを知るための話合いであり、ケンカであることを忘れないでくださいね」。どうしたら家庭が一番うまくまわっていくのか? それを真剣に話合い、お互いの意見をきちんと聞き合う両親の姿は、たとえそれがケンカになったとしても、子どもはきっと、そこからなにかを学んでいるはず。そうやって、親子一緒に成長していくのが、子育ての醍醐味なのかもしれない。


参考:おおたとしまささんの前回インタビュー記事『こども本位にする3つの大切なこと』

おおた としまさ

育児・教育ジャーナリスト。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。著書は『忙しいビジネスマンのための3分間育児』『パパのトリセツ』、『ガミガミ母さん、ダメダメ父さんから抜け出す68の方法』など。

  文/坂本真理 撮影/ヤマグチイッキ