ライフのコツ
2013.11.18
Rラーニングで出生率が上がる!?
世界の学び/韓国のiRobi
世界の教育情報第2回目は、東京学芸大学特命准教授金ミンコン先生からのレポートです。
- 韓国の幼稚園には、ロボットがいるの?!
- ある幼稚園では、iRobi(アイロビィ)と呼ばれるロボットが出席確認をしています。子どもがロボットを触ったり声をかけたりすると、「どうしたの?」と返事をしてくれます。それだけではありません。英語を話すことができ、発音チェックもしてくれます。ロボットの胸にあるタッチパネルを押して好きな童謡を選ぶと、ロボットがその歌に合わせて踊りだすので、子どもたちも楽しく一緒に体を動かします。
これは隣の国、韓国の幼児教育現場で行われているRラーニング(Robot Based Learning)の様子です。
2009年11月、韓国政府は「幼児教育先進化総合発展法案」を発表しました。その事業の核心となるのが、ロボットを活用した教育でした。2010年、教育科学技術部(日本の文部科学省にあたる機関)は、モデル事業として100億ウォン(約10億円)を支援し、2011年には400億ウォン(約40億円)を投資しました。今年度中に約8,000園ある全国の幼稚園すべてにロボットを導入することになっています。
一方、現在韓国は日本以上に深刻な少子化問題を抱えています(合計特殊出生率→日本:1.39名、韓国:1.30名[OECD統計、2013])。その原因の一つは幼児教育費の負担にあります。そこで、幼稚園におけるRラーニングの実践が、塾の役割の一部を担っています。特にロボットはインターネットにもつながっているため、親はいつでもロボットや専用サイトを通して自分の子どもの様子も見ることができます。安心して仕事に専念できるわけです。結果的には、家庭の教育費も節減され、出生率が上がることが期待されています。 -
- Rラーニングへの期待
- こうしたRラーニングは、様々な観点から期待されています。ロボットが教育現場に介在することによって、子どもの学習意欲は高まり、集中力や想像力などの育成に大きな貢献を果たすという研究結果も出ています。こうした教育効果はもちろんのこと、Rラーニングの優れた担い手となる新たな教育人材(ロボットを持って指導ができる教師)の創出にもつながります。さらに、ロボットのコンテンツ開発を筆頭に新規事業が次々と立ち上がり、韓国の教育産業は大きな進展を見せています。
- こうした幼児教育における先端的なツールの導入の背景には、スピード感を重視する韓国の社会性があります。そして「孟母三遷の教え」の故事のように、教育熱心な親の意識が、強く反映されているとも言えます。今後どのように発展していくのか、Rラーニングによる韓国幼児教育の動向に注目ですね。
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金 ミンコン
東京学芸大学特命准教授