ライフのコツ
2014.03.19
電子工作?テクノと手芸を掛け合わせる
柔軟な思考を育みこどもの応用力をあげる
電子工作作品を発表するユニット「テクノ手芸部」。情報系専攻出身のかすやきょうこさんと、文学系専攻出身のよしだともふみさんの2人で、2008年に結成した。親子でのものづくりを通じて、こどもの柔軟な考え方を育むためのアドバイスを伺いました。
- ユニット名が作品第1号!
- 「テクノ手芸部」の作品は、電子工学の原理と身近に手に入るものを組み合わせたもの。
「電子工作というと、高度な技術や知識がいると思われがちですが、全くそんなことはありません。こどもでも簡単につくって楽しめるものなんです。ただ、大人も含めて、理科が苦手という人も多いですよね。でも、フェルトや紙を使ってかわいいものをつくれたら、興味がわくのではないかと思いました。
ユニット名はかなり試行錯誤しました。"テクノ""手芸"という、男女どちらにも親しみやすい言葉を合わせたため、多くの人たちに興味を持ってもらっています。このユニット名が、異なるジャンルを組み合わせるというぼくらのコンセプトの象徴であり、作品第一号でもあります」とよしださん。
- 大人とこどもが一緒に楽しめるものづくり
- 今回、『あそびのレシピ』として彼らに4つの作品を紹介してもらいましたが、それらはどれもLED、紙、フェルトなど、ホームセンターなどで手軽に手に入る材料を使用しています。
こどものころ、工作や機械分解に夢中になったお父さん方も多いはず。今回はこどもと一緒につくれるように簡単な構造となっているので、親子でアイデアを出しあいながら一緒にオリジナルおもちゃをつくってみましょう。
「光るブローチ」の『あそびのレシピ』は、LEDとボタン電池を、色紙や布と組み合わせたシンプルなブローチ。スイッチの原理で、手で押すとLEDがピカっと光ります。
レシピはこちら - 「光でうごくネコ」の『あそびのレシピ』は、小さいソーラーパネルとエンジンモーターのキットを利用した作品。ソーラーパネルに光を当てると、猫の目の色がくるくると変わります。
レシピはこちら - 「魚の好きなネコ」の『あそびのレシピ』はフェルトでつくった猫の前に、同じくフェルトの魚を置くと、猫の目がまるで魚を狙っているかのように光るという仕掛け。魚の裏にはアルミホイルが貼ってあり、わざと断線させた部分に魚を置くことで、電池から電流が流れて猫の目にあたるLEDが光るのです。
レシピはこちら - 「光ファイバーで夜の動物の群れをつくる」の『あそびのレシピ』は、猫たちが見上げる夜空に星が光るというロマンチックな作品。厚紙に猫の形に切ったフェルトを貼り、星の位置に開けた穴に光ファイバーを通したものです。光ファイバーの先端に懐中電灯などで光を当てると、星や猫たちの目が光りだします。
レシピはこちら - レシピ通りの動物をつくるだけでなく、「お子さんの好みにあわせて、お気に入りのキャラクターや動物を登場させるとより愛着が増しますよ」と言うかすやさんの提案も。
「完成する前に技術の面で挫折しないように、なるべくシンプルな仕組みを使っています。楽しむことが一番大切だからです。ひとつの単純な回路から、見せ方を変えれば何十通りも面白いものがつくれます。同じ原理を応用して使うことを、こどもが楽しみながら学ぶ機会にしたいですね」。
自然に学ぶコツは、"楽しむこと"。楽しみながら覚えたことは、将来大きな糧となります。親子の触れ合いを通じて、そのきっかけをつくっていくのがベストかもしれません。 - 社会とのつながりを教えてあげる
- 「現代こそ物事の原理を学ぶことが大切だ」と、よしださんは言います。
「僕がこどもの頃は、ラジオやテレビを分解する子がたくさんいました。今はそういう子は減ったし、たとえ分解しても今の製品はICチップが埋め込まれているだけです。構造や原理がなかなか見えにくい世の中になっています。
よく『学校の勉強が将来何の役に立つの?』と聞く子がいますね。自分の知ったことが、実生活とつながらないという意識が強いのでしょう。学んだことと社会とのつながりを教えてあげることが、学ぶ意欲と考える力を養うことになると考えています。
お父さんには『実は電気のスイッチは、これと同じ仕組みを使っているんだよ』と、つくったもののしくみを身近なものとつなげてあげたり、一緒にホームセンターに材料を買いに行ったりしてほしいですね。『お父さんすごい!』って言われる機会も増えると思いますし(笑)」。
- こどもが使う道具の質を意識してあげることも大切
- 「電子工作だけでなく全てのことに言えるのですが、こどもが使う道具や材料にはさまざまな種類や質のものがあるということを、大人には意識してほしいです」とお二人は口を揃えます。
例えば文房具。のりやはさみだけでもたくさんの種類があるのに、一番安いからという理由だけで選んだり、工作に使うのはボンドのみなどと決めつけたりしてはいないでしょうか。 「高ければ良いというわけでもなく、用途に合わせたものを使うことが大切です。うまくつくれなかったのは、こどもが不器用だからではなくて、道具が合っていなかったのかもしれません。他の道具や手段でできないかを、大人も一緒になって考えてみてほしいですね」とかすやさん。
杓子定規に選ぶのではなく、質の違いを実験するくらいの気持ちで、何でも試してみる方が、大人もこどもも楽しめるはずです。
『あそびのレシピ』では、テクノ手芸部のおすすめ部品のリンクも貼っていますが、あくまでも一例です。この他にも使えるものはたくさんありますので、いろんな部品を試してください。
- 異なるジャンルの組み合わせで新しいものをつくる面白さ
- 全く異なる分野を組み合わせた「テクノ手芸」のように、既存の異なるジャンルを組み合わせることをこどもの時から体験してほしいと、お二人は語ります。
その意義は大きく3つあるそう。
Ⅰ)新たな発想を生み出す。
できないことがあったら、何を使えばできるようになるかを考える。違うジャンルの素材を持ってきて代用した方がうまくいく場合もある。その過程で、新たな思いつきやアイデアも出てくる。
Ⅱ)未経験の分野を面白いと思える可能性がある。
手芸は手芸、電子工作は電子工作と決め付けずに、どのようなことでも、違うジャンルの素材を持ってくることで、未経験のものにも挑戦する機会がやってくるはず。手がけてみたら、楽しく、役にたつことかもしれません。挑戦したあとで、好きか嫌いか、有効か無効か決めた方が良い。
Ⅲ)それぞれの人の得意分野を発揮させることを学ぶ。
ひとりでひたすら頑張っても解決できない時もある。そんな時は、できないことはできる人にまかせてみる。人と力を合わせて、それぞれの得意な分野を提供しあう。
よしださんがこどもの頃、お父さんが仕組みをつくり、お母さんが絵を描いておもちゃをつくってくれたことがあるそうです。「小さなロープウェイのキットにおばけの絵を貼り、部屋の中に張り巡らせて、おばけを部屋中飛ばすというユニークなものでした」と当時を思い出すよしださん。「そんな風に両親が二人で一緒につくってくれたのは、一度だけでしたが、とても楽しかった覚えがあります。それぞれ自分にできることを組み合わせておもちゃをつくってくれた思い出が、今のテクノ手芸のコンセプトにもつながっているのかもしれません。
こどもが参加できない年齢だとしても、"一緒に関わること"が大切なのだと思います」。 さまざまなジャンルに触れていると、異分野の共通点を発見することもあります。物事を既存の型に当てはめないで、親子で一緒に、頭をやわらかくして考える時間を、意識してつくってみてはいかがでしょう。
テクノ手芸部
かすやきょうこ(左)、よしだともふみ(右)によるアートユニット。2008年結成。手芸と電子工作という異なるジャンルを組み合わせた作品を『テクノ手芸』と名付け、作品制作やワークショップを展開中。主な著書に『テクノ手芸』(ワークスコーポレーション)、『羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう』(マイナビ)
テクノ手芸部HP『テクノ手芸ウェブ』
文/イデア・ビレッジ、塚田沙羅 撮影/西邑泰和