レポート

2016.06.02

ビジネスモデル・キャンバスでイノベーションを起こす〈前編〉

都市型イノベーションの場「品川塾」が開講

今春、品川にキャンパスを構える多摩大学大学院と、品川エリアの企業がコラボレーションして、都市型のイノベーションを考え、発信していく場として「品川塾」が開講する。そのオープニングイベントが去る4月5日に開催された。世界各国で始まっている都市型イノベーションとはなんなのか? 前編では、品川塾塾長・紺野登教授と多摩大学大学院教授・河野龍太教授による講演を紹介しよう。

垣根を取っ払い、
新しいビジネスモデルを構想する

企業同士が連携しオープン・イノベーションに取り組む流れは、近年、世界各国で始まり、日本でも導入されている考え方ではあるが、まだまだ目立った動きが少ないのも確か。ただ、これまでのように競争優位を長期に維持できる時代は終焉を迎えようとしている。イベントの終盤に登壇した河野教授は、これからは、どのような時代に突入するのか? どんな人材が必要とされるのか? を語ってくれた。
 
「ICTによって業界の垣根が曖昧になっています。これからは、業界の外、想定していなかった競争相手からどんどんイノベーションが起きます。生き残るためには、継続的に新しい事業を生み出していかなければなりません。常に変化することが、企業にも、個人にも求められる時代になっていくのです」(河野教授)
 
「KPMGグローバルCEO調査2015」を引用し、世界のCEOが考える今後3年の間に変革がおきる分野として2位に「ビジネスモデル」があげられていることを指摘した。また、それに伴い、ビジネスパーソンにも変革が求められていくとも。
 
「イノベーションを起こし続け、企業が変化し続けるためには、もちろん、ビジネスパーソンに求められることも変化します。『分析力』や『ロジカルな思考力』などは重要ですが、それだけでは決め手になりません。加えて、これからは、ビジョンを構想する力、新しいビジネスモデルを創造する力といったイノベーションを起こすスキルがビジネスパーソンが成功する上で重要なスキルになっていきます」(河野教授)
 
 
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現在、品川に拠点を置く多摩大学大学院では、イノベーションを実現するMBAを目指し、志ある経営者や起業家、そして多くの社会人イノベーターを育成している。
「多摩大学大学院での活動を、大学の中だけで完結させないことです。品川エリアの先進的な企業と連携し都市全体でイノベーションを起こしていく。品川のイノベーションのエコシステムとしてのポテンシャルを引き出すために多摩大学大学院が触媒となって『品川塾』を展開していきます」(河野教授)
 
後編では、オープニングイベントの基調講演、イヴ・ピニュール教授の「ビジネスモデル・キャンバスによって、世界のイノベーションはどう変わったか?」、その内容を紹介する。

品川塾

品川塾は、品川にサテライト・キャンパスを構える多摩大学大学院(ビジネススクール)が触媒となって機能し、「知の創造」を切り口に、近隣の、そして品川に集まるイノベーション志向の企業や個人のネットワーク支援をしていこう、という試みです。品川を東京のイノベーション・スポットとして位置付け、イベントやワークショップ、垣根を越えたプログラム、人材育成(イノベーターシップ)のためのネットワークなどを展開していきます。

文/坂本真理 写真/栗木妙