組織の力

2016.08.30

30年以上健康経営を支えるサンスターの「心身健康道場」〈後編〉

経営にも好影響を与える社員の健康という価値

「企業のウェルビーイング」の重要性が叫ばれるはるか以前、1985年より30年間にわたって、社員の健康維持をサポートし続けている同社の福利厚生施設「心身健康道場」。現在は、メタボ、高血圧、高血糖症など、年に1度の健康診断で特定保険指導対象になった社員が道場に泊まり込みで、2泊3日のプログラムを受けている。社員の体質改善に実際に大きな結果を出している道場の内容と、「健康」を意識することが組織に与える影響について、引き続き門脇さんに伺った。

幅広い効果をもたらす
ウェルビーイング活動

道場に入ることが業務上の義務とはいえ、つらいこと、嫌なことになってしまっては意味がない。このように、心身ともに社員に健康になってもらい、かつ健康な習慣を続けてもらうための様々な工夫が施されているのがわかる。今回、参加した方々に実際に体験した感想を聞いた。
 
「自身の健康課題が明確になり、目標も設定できました。今年より単身赴任となり、生活環境が変化しているタイミングで食生活を改善する計画が立てられたのは良かったですね」(50代男性)
「運動はもちろんですが、座学での専門家の話は、身近なところからできることを見つけることの大切さ、無理をし過ぎることなく、細く・長くでも継続して健康を考えていくことが大切であると学べました」(20代男性)
 
なお、定期健康診断は毎年2~3月に実施し、4月には結果が出る。それをベースに該当者の選定を行ない、該当者には、5月中旬に入門案内書が送付される。研修は6月中旬から順次行われるため、入門までは1ヶ月近い猶予がある。道場はパソコンなども利用できる環境ではあるが、基本的には入門までの期間に仕事の調整を行っておき、入門中の3日間は健康改善に専念することになる。
道場体験後は、カリキュラム内容や座学の知識などを社員が現場で共有することで、普段当たり前のように備わっていた「健康な体」に対しての意識を社員皆で増すことができる。また、自己管理意識が高まったり、健康に従事する企業の一員であることを再確認することで、仕事への姿勢や、職場の雰囲気にも良い影響があるという。
 
「社員の健康を会社がここまで考えてくれているのだということで感謝の気持ちにもつながり、貢献度合いやモチベーションも上がるようです。また、体験メンバーはランダムで集められるので、まったく別の部署の社員と、年齢・役職関係なく交流が生まれます。そうやって部署をまたいだ人脈を広げられることで、社内コミュニケーションにも一役かっていると思います」(門脇さん)
 
30年以上、社員のウェルビーイングに取り組んできたサンスター。この地道な継続が、かけがえのない効果を生んでいる。
「社員の健康への意識が高まったことで、重篤な病気になる社員を減らすことができています。長期入院する社員が減って、皆がいきいきと仕事をできるということは、生産性の維持・向上につながります。また、会社としては、健康保険組合の保険料率を低いレベルで運営できるという効果も得られます」(門脇さん)
さらに、自前のプログラムを改善しながら社員の健康改善につなげていき、健康食品の「健康道場」ブランドや、一般向けにアレンジした体験型の健康支援プログラム「健康道場ツアー」という新しいビジネスを生むきっかけにもなっている。
これからの企業のウェルビーイングの形を考えるにあたり、サンスターの活動は大きなヒントになるのではないだろうか。
 
 
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文/イデア・ビレッジ 撮影/上田浩江