レポート
2018.07.18
個人の自己実現と企業の成長を両立するには?
最先端スタートアップから学ぶチームビルディング
2018年6月12日夜、「Mirai Forum#10 最先端スタートアップから学ぶ最高の未来チーム作り~OKRとカルチャー作りの仕組み~」と題したイベントが、KOKUYO東京ショールームのスタジオで開催された。「チームビルディング」や「OKR」など、ビジネスパーソンにとって気になるトピック満載で行われたイベントの模様を紹介しよう。
注目スタートアップの役員と
人材開発エグゼクティブが登壇
イベントの登壇者は、スマートフォンのフリマアプリ「メルカリ」で知られる株式会社メルカリ執行役員の唐澤俊輔氏と、リーダーシップ開発などの分野で活躍するプロノイア・グループ株式会社代表取締役社長のピョートル・フェリクス・グジバチ氏。
サブタイトルに含まれる「OKR(Objective and Key Result)」は、「目標と主な成果」という意味で、Googleなどのグローバル企業で導入されている業績管理手法だ。具体的には、企業全体が掲げる目標(Objective)に対して個人やチームがそれぞれ具体的な指標(Key Result)を設定することを指す。
例えば「ECサイトの月次売上げを前四半期比120%アップさせる」という目標(O)に対して、チームは目標達成に向けて「顧客1人あたりの購買金額を5000円アップさせる」など具体的な数値指標など(KR)を掲げ、メンバー一人ひとりのタスクを設定する。企業とチーム・個人の目標をつなげるのに有効とされ、メルカリでも導入されている方法である。
ボトムアップとトップダウンを
マッチさせたメルカリのOKR
最初にピョートル氏が『日本のビジネス界に6つの魔法をかける』というタイトルでプロノイア・グループのミッションを紹介する。『6つの魔法』とは、今後のビジネス界に起こりそうだとピョートル氏が予測する6つの変化のこと。プロノイア・グループでは、組織文化の変革コンサルティングを通じてこの変化を積極的に促していきたいのだという。一つひとつの内容を簡単に紹介しよう。
1.経営する企業のカタチ:「モノづくり(メーカー)」から「仕組み作り(プラットフォーム)」へ:今後の成長が期待されるのは、オンライン・オフラインのプラットフォームを作り、運営する企業。
2.性質:「計画主義」から「学習主義(走りながら考える)」へ:ワーカーが企業を選ぶときに、金銭報酬より「自己実現できるかどうか」が基準になっていく。
3.仕事のあり方:「Closed」から「Open」へ:役職に関わらず、すべての情報を共有して働く企業が主流に。
4.管理の方法:「トップダウン」から「ボトムアップ」へ:トップダウンでゴールを設定するあり方から、ボトムアップで目標を決め、実行していくあり方が主流になる。
5.主義:「計画主義」から「学習主義」へ:時間をかけて事業計画を立てるのではなく、7割程度の準備でスタートし、取り組みながら考えて学ぶ企業が増えていく。
6.部下との関係:「鵜飼い」から「羊飼い」へ:細かく管理するのではなく、任せる部分を増やすマネージャーが増える。
「管理の方法という点では、個人やチームが目標を掲げるボトムアップだけでは、企業が目指すべき全体像を見失うおそれがあります。そこでメルカリでは、トップがメンバーの多様な声を聞いて取り組むべきことを3~4項目に絞り込む形で、トップダウンとボトムアップを組み合わせたOKRを行っています。いわば『ミドルアップ・ミドルダウン』ですね」(唐澤氏)
OKRの手法は急速な拡がりをみせているが、ボトムアップとトップダウンのバランスは企業・組織によってまちまちだ。メルカリが実践している『ミドルアップ・ミドルダウン』のスタイルは、社員の自己実現と企業の成果達成を同時に実現するための一つの解といえるだろう。
唐澤 俊輔(Karasawa Shunsuke)
日本マクドナルド株式会社でマーケティング部長や社長室長を歴任し、組織内部からの変革を推進。2017年に株式会社メルカリに入社し、2018年より執行役員。VP of People&Culture(人事部門長)と社長室長を兼務。
ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)
2000年に来日し、ベルリッツとモルガン・スタンレーを経てGoogleに入社し、人材育成や組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、プロノイア・グループ株式会社を設立し、企業のイノベーションに向けて組織文化の変革コンサルティングを行う。著書に『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ)、『New Elite』(大和書房)など。