レポート
2020.09.09
豊かに働くためのオフィス環境のポイントとは?
『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』オープニングセミナーレポート
2020年7月、東京・府中市の『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』で、「『豊かに働く』環境整備のポイントとは~テレワークとサテライトオフィス等の活用を上手に組み込むこれからの働き方~」と題したセミナーが開催された。新型コロナウィルス感染症対策としても新たな働き方が模索される今、働く場所にも注目が集まっている。オフィス環境整備に詳しい3人のスピーカーが登壇したセミナーの模様をレポートする。
テーマ
1 ワークスペース整備の潮流について
2 サテライトオフィスの活用の広がりと事例について
3 コワーキングスペースの上手な活用方法について
4 こらからの『豊かに働く』環境形成のポイント
登壇者
鈴木賢一氏(コクヨ株式会社)
石崎真由美氏(株式会社ザイマック不動産総合研究所)
星野邦敏氏(一般社団法人コワーキングスペース協会)
ファシリテーター:湯田健一郎氏(東京テレワーク推進センター)
今後のワークプレイスを語る
今回のセミナーは、東京テレワーク推進センターが東京・府中市、東久留米市、国立市の3カ所に設置した『TOKYOテレワーク・モデルオフィス』のオープンを記念して開催されたものだ。セミナーの第一部では、登壇者3名がそれぞれキースピーチを行った。
強制的な在宅勤務によって
オフィスで働くことが当たり前ではなくなった
1人目として、コクヨ株式会社 ワークスタイルイノベーション部の鈴木賢一氏が「ワークスペース整備の潮流について」というテーマで登壇。
多様な企業の働き方改革やオフィス構築に携わってきた立場から、新型コロナウィルス感染症拡大をきっかけとするワーカーの意識変化や、今後求められるワークプレイスのあり方について語る。
鈴木:「実はコロナ禍以前から、労働環境に関してはさまざまな社会課題がありました。例えば下記のような課題です」
1 働き手が多様化しているにも関わらず、ワークスタイルのバリエーションが少ない
2 日本全体で見たときの労働生産性が低い
「しかしコロナ禍に伴う緊急事態宣言によって、個人も組織も半強制的に在宅勤務を経験しました。オフィスで働くことが当たり前ではなくなり、個人の働き方は『意思を持って働く場と時間を選択する』スタイルに変わりつつあります」
「コクヨでは、お客さまである259社の企業様に向けてアンケートを行い、ポストコロナにおける組織の方向性を聞きました。結果、9割以上が『変化に適応し、働き方を進化させる』と回答しています」
センターオフィスは
「そこにしかない価値」を提供する存在に
鈴木:「ポストコロナに向けて、組織はさまざまな課題に直面しています。中でも注目度が高いのが、『働く場』に関してです。その背景には、テレワークが普及したことに加えて、コロナ禍による各企業の業績悪化があります」
「先述したコクヨの調査によれば、『コロナ後のオフィス出社は週2日程度が適当』と答えた人が約5割いました。この回答から考えると、『オフィスの執務空間は社員数の半分が収まる面積で十分』ということになります」
鈴木:「オフィスに出社するのが当たり前でなくなった今、センターオフィスは『そこにしかない価値』を備えた存在として機能する必要があります。コクヨでは、オフィスの役割を図のようにとらえ、『BASIC』と呼んでいます」
安全性と生産性向上を
両立する働き方が求められている
鈴木:「withコロナ時代といわれる現在、多くの企業の動きを追っていくと、『どこで働くか』に関して、2つの方向性がみられます」
1 1日も早く全員出社体制に戻す
2 在宅勤務を継続し、出社率を抑える
「1を選択するなら安全性の確保が課題になります。また2の場合はコミュニケーションもオンライン中心で働くことになりますが、そのスタイルで今までの創造性をいかに維持するかがテーマといえます。作業効率や生産性を高めながら安全性を担保する方法を、コクヨでは今後もご提供していきます」
「自宅近くで働きたい」という
ワーカーのニーズが目立つ
続いての登壇者は、株式会社ザイマックス不動産総合研究所の石崎真弓氏。
不動産マーケットの調査分析・研究や、働き方改革に伴うオフィス需要変化のリサーチをもとに、「サテライトオフィスの活用の広がりと事例について」というテーマでスピーチを行った。
石崎:「株式会社ザイマックスでは、ZXY(ジザイ)というサテライトオフィスサービスを現在約100拠点ほど運営しています。サテライトオフィスは、『フレキシブルに働ける場所』といったニュアンスから、本日の資料では『フレキシブルオフィス』という呼び方も使っています」
「ZXYは、近年は東京郊外や近郊エリアに拠点を続々とオープンしています。首都圏のオフィスワーカーに実施したアンケート結果からは、『通勤ストレスなく自宅近くで働きたい』というニーズが読み取れます。そこで私たちも、働き手の居住が多い郊外・近郊エリアに力を入れています」
多くの企業はメインオフィスを減らして
テレワークを増やす意向
石崎:「ここからは、当社で実施した『フレキシブルオフィス市場調査2020』の結果を共有しながらお話しします」
「コロナ危機をきっかけに、テレワークを認めていなかった企業も在宅勤務制度を導入し、9割超の企業が在宅勤務を経験しました。さらに、企業の景況感が悪化していることもあり、今後のオフィス施策について『自社オフィスの面積を縮小したい』という企業が増えています」
「このような状況の中で、Afterコロナのワークプレイスの方向性についてアンケートで聞いたところ、企業規模に関わらず『メインオフィスとテレワークの両方を使い分けていきたい』という回答が最も多くみられました」
自宅・メインオフィス・サテライトオフィスを
使い分けて豊かに働く
石崎:「テレワーク需要にあたって私たちが提案したいのが、サテライトオフィスやレンタルオフィスといったメインオフィス以外のワークプレイスです。このようなワークプレイスは、居住人口が多い郊外・近郊にも充実しはじめています」
「今後は、仕事の内容やワーカーの意向に応じて、都心と郊外のオフィスを使い分けて働くことによって、より快適で生産性の高い働き方を実現できるのではないでしょうか」
TOKYOテレワーク・モデルオフィス
TOKYOテレワーク・モデルオフィスは、自宅以外の場所でもテレワークを行える環境の整備を進めるため、都がモデル的に設置するサテライトオフィスです。都内在住または在勤で、企業等で働く方(個人事業主を含む)に無料でご利用していただけます。https://tokyo-telework.jp/modeloffice/