レポート
2020.07.17
withコロナ時代の"新しい働き方様式・ニューノーマル"
ナレッジワーカーが気付くべき新しい視座・視野・視点とは?
今回の新型コロナウィルス感染症拡大により、人々の生活様式や働き方はいわば強制的にアップデートされた。在宅ワークやWEB会議といった新しい働き方を取り入れるなかで、多くのナレッジワーカーは大きな価値観の変容と可能性に気づいたことだろう。
新型コロナウィルスがもたらした変化が社会全体に広がりつつある状況を受け、長年ナレッジマネジメントに取り組んできたアクセラテクノロジ株式会社と、多くの企業・組織の働き方改革を支援してきたコクヨ株式会社による共催WEBセミナーが6月26日に開催された。『withコロナ時代の“新しい働き方様式・ニューノーマル” ナレッジワーカーが気づくべき新しい視座・視野・視点とは?』をテーマに、スピーカーがそれぞれの立場から意見を述べ提言を行った。
曽根原士郎氏(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント)
松田潤氏(アクセラテクノロジ株式会社 シニアコンサルタント)
コロナが内省を促し、気づきを生み、
ワーカーのマインドが大きく変化する
最初に登壇したのはコクヨ株式会社の曽根原士郎氏。コクヨの3つの事業領域(空間価値領域・ビジネスサプライ領域・グローバルステーショナリー領域)を紹介したうえで、曽根原氏自身が携わる"働く"シーンにおけるコンサルティング業務について言及し、「どんな空間、マインド、仕組み・仕掛けがあれば、会社が成長し、ワーカーが力を発揮できるかという問いに対して、より良くなるよう提言・サポートをしている」と述べた。
続いて、withコロナ時代に向けたコクヨの方針『WORK TRANSFORMATION』と『ポストコロナにおける働き方の変化』について触れ、「これらのなかからポイントをいくつか紹介したい」として本題に入った。
曽根原:「私自身、この数か月で働き方や仕事に関する既成概念が崩れていくことを身をもって感じていますが、webアンケートにて約3,000名のビジネスマンへ新型コロナウィルスにより何が変わったかを広く調査した結果、次の11の働き方の変化の兆しが見えてきました」
WEBアンケート『ポストコロナにおける働き方の変化』(N=3092、2020.5.25~27実施)コクヨ調べ
曽根原:「同様のアンケートをコクヨ社内でも実施したのですが、その結果で際立っていたのが、『自分らしい生き方や働き方について深く考える機会が増えた』という問いに対して、20代の約8割がYESと答えていた点です。年代が上になるほど割合は減りますが、60代でも半数以上がYESなんです」
コクヨ社内アンケート『ポストコロナにおける働き方の変化』(N=1093 2020.5,.18~20実施)コクヨ調べ
曽根原:「これは、コクヨ社内に限ったことではなく、約3,000名へのwebアンケートでも、『自身のスキル向上や専門性習得に投資する機会が増えた』、『自身の仕事や勤め先を複数持つことへの意識が高まった』という声が多く、自分に適した生き方を再考する意識が高まり、深く考える機会が増えているようです。一つの組織の中でキャリアを築いて出世して......、という終身雇用を前提とした日本型のサラリーマンストーリーではなく、『自分は何のために働いているのか? 』を考えるパラダイムシフトが起こったのだと理解しています」
さらに曽根原氏は、在宅勤務経験のあるワーカーを意識・行動変化の傾向から6つのタイプに分類した結果を提示。縦軸に「分散志向・集合志向」、横軸に「変化志向・継続志向」をとったマトリックスに表示し、いわゆる新しい志向のワーカーが全体の4割ほどを占めている点に触れた。
アンケート『ポストコロナにおける働き方の変化』のコクヨ社内向けとwebの結果を比較 コクヨ調べ
企業・組織には、コロナへの対処療法ではなく、
変化への継続的な適応・進化が求められる
続いて話題は、withコロナ時代に向けて企業・組織はどう変革すべきかに移った。
曽根原:「今回のコロナ禍による働き方や社会通念の変化はいわば強制アップロードでしたが、これをコロナ対策という一過性のもので済ませるのではなく、継続的に進化していくべきだと考えます」
「働く場所はオフィスで、働くとは自分の時間・労力を提供することで、会議は顔を合わせて行うもので、稟議や契約は紙に押印が必要で、情報は紙の書類で管理する......、というこれまでの働き方にはもう戻れないという状況のなか、『継続的に適応・進化する』のか、『短期的な施策で対処療法をする』のか、『これまでのやり方を維持する』のか、企業・組織は大きく3つの方向に分かれることが想定されます」
「どの道を選択するのかにより、その後の行く先は大きく変わるでしょう。コロナ禍により発生した目の前の問題に対して改善策を打つのではなく、今後のあるべき姿を設定し、現実とのギャップを乗り越えるべき課題だと捉えて具体的に手を打つことが求められるのです。ただ、新型コロナウイルス感染症拡大による強制的変化への対策が急務ななかで、真の課題を設定するのは容易ではないため、まずは『今試せることは何か? 』を考えることが大切です」
曽根原:「そこで参考にしたいのが、経営論、戦略論の専門家として世界的に活躍するゲイリー・ハメル氏が提唱する『new work rules』です。この『new work rules』によると、大量生産・大量消費の社会でワーカーに求められていたのは、服従や勤勉さで(work 1.0)、ナレッジエコノミーでは知識・知能が求められました(work 2.0)。このwork2.0までは会社の決めた枠組みの中で働いていればよかった。でも、これからのクリエイティブエコノミーでは個人の情熱や創造性、率先して物事に取り組む姿勢が求められます(work
3.0)」
「そして、この"work 3.0"で優先されるのが『個人が創る物語』、つまり、自分が何をしたいかということです。これからは、この個人を中心に考えていくことが重要になるでしょう。私自身、今回2か月あまり在宅ワークをしてみて、自分らしく働き、生きるという"個"中心の視点を取り戻したことを実感しています」
「さまざまなバイアスが外れ、多くの知に触れるなかで、課題・仮説駆動で深く考え、自分なりのシナリオメイクができるようになりました。そして、同じような視座・視野・視点を持つメンバーとコラボレーションし、新しい価値を創造することが、ナレッジワーカーには必要なのではないかという結論に至ったのです」
最後に曽根原氏は、同じ気づきを得たパートナーと共有する新しい視座・視野・視点として、次の3つの『New Normal Protocol』を提言した。
●共感と共生を前提にする(一人勝ちではなくみんなと協創する)
●価値を変える"やること・やり方"を創る
●常にクリエイティブを身近に置き習慣にする
曽根原氏が特に重要だと強調したのが3つ目の『常にクリエイティブを身近に置き習慣にする』だ。そのツールとして、表現力豊かな手書きメモの良さも取り入れつつ自社で開発し、現在はアクセラテクノロジに権利を移管して『K-Board』の名称で販売されている『KAKIAGE』を紹介。次のスピーカーであるアクセラテクノロジ・松田氏へとバトンを渡した。