ライフのコツ

2021.04.16

シンガポールの宿題は調べて発表が基本

世界の学び/インターナショナルスクールの教育事情

グローバル人材育成を目指すシンガポールの宿題は、自分で調べた内容や制作物の発表が基本。宿題の量はさほど多くはないものの、発想力や想像力が必要な課題が多く、発表時には歌や踊り、演技などのパフォーマンス力も求められる。自由な校風のイギリス系インターナショナルスクールの宿題を通して、シンガポールの教育事情や方針を紹介する。

シンガポールのインター校は
のびのびしたおおらかな校風

シンガポールは海外からの進出企業も多く、多様な国籍の人が働いています。永住権の問題などから、シンガポールに国籍を持たない外国人の子どもの多くはインターナショナルスクール(以下インター校)で学んでいます。

また、シンガポールには日本人も多く住んでいますが、やはり永住権の問題などから公立のローカル校ではなく日本人学校かインター校を選ぶことがほとんどです。
インター校にはイギリス系、フランス系、アメリカ系、インド系などがあり、いずれも私立なので、学校ごとに独自のカリキュラムが組まれています。

シンガポールのインター校の大きな特徴は、小学校では教科書がなく、ノートも学校に置いたままという点です。中学に入るとやや厳しくなるものの、小学校では勉強よりも伸び伸びと過ごしてもらうことを教育方針とする学校が多いようです。ローカル校では小学校からたくさん勉強をしますが、インター校は子どもの自主性を重んじたおおらかな校風が特徴です。




バカロレアに基づく探究型学習で
グローバル人材の育成をめざす

インターの小学校の授業はシンガポールの公用語である英語で行われます。また、多くのインター校のカリキュラムは、世界共通の教育プログラム国際バカロレアに基づく「UOI(Unit of Inquiry)」という探究型学習を基本としています。

シンガポールのインター校の多くが国際バカロレアの教育プログラム「UOI」を取り入れている背景には、国際バカロレアがグローバルな人材育成をめざした教育プログラムという点があります。

国際バカロレアを導入している学校であれば、どの国でも共通のカリキュラムが提供され、世界規模の総合的な知識を身につけられるため、各国のインター校で導入されているのです。

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探究型学習は
テーマを横断的に学ぶ

「UOI」は教科の枠を超えた探求型学習です。理科や社会といった単科目でとらえず、1つの探究ユニット(テーマ)に対して理科・社会・国語・算数などさまざまな要素を融合させながら進めていく学習です。

教師は教えるのではなく、子どもたちの自主性を尊重し、子どもたちが関心を持ったり疑問を抱いたりした内容について、一緒に探求して答えを見つけ出します。そのため、探究テーマの大枠は学年レベルにあわせて先生が提案しますが、より具体的な探究テーマは、グループごとに話し合って決めていくのが基本です。

一般的に「UOI」の授業では、5~6週間ごとに1つのテーマについて調べたりグループワークを行い、その成果をまとめて発表します。ここで重要になるのが宿題です。発表までには入念な下調べが必要で、発表に使う小道具制作などの補助的な作業も多く発生します。こうした授業時間内では収まりきらない作業がすべて宿題になるのです。




宿題の内容も分担も
子どもたちが自ら決める

「UOI」プログラムにおける探究型学習では、家での学習や宿題も重要な位置を占めていますが、この宿題においても、内容や分担をグループごとに話し合って決めていくのが基本です。授業ではグループ作業を行い、その内容をもとに家で個人作業(宿題)としてじっくり取り組み、それぞれの個人作業の結果をまとめてチームとして授業で発表する、という流れです。

調べるための資料や方法は子どもたちに任せていて、図書館の本や先生が提供する資料だけでなく、テレビやインターネット、親や関係者への聞き取りなど、方法は自由に選べます。シンガポールの歴史を調べる時は自宅に近い遺跡を訪れたり、水のリサイクルを調べる時は資料館を見学したりと、取材や実施検分も行います。聞き取りや見学では、親が協力や同行することもあります。



グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。https://gl-stage.com/service/mama/