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シンギュラリティとは?テクノロジーの進化によって来るかもしれない未来
知っておきたトレンドワード12:シンギュラリティ
AIをはじめとしたテクノロジーの発展とともに来るかもしれない未来として注目された「シンギュラリティ」。具体的に、どのような変化が起こった世界なのか?
シンギュラリティとは?
シンギュラリティ(singularity)とは、数学や物理学の分野で「特異点」を意味する言葉です。例えば数学では、一般のところに比べて異常な形態を示すところを意味する言葉として使われています。 この言葉を、「技術的特異点」という意味で科学技術の進展に対して用いる考え方を広げたのが、アメリカの発明家で、2012年よりGoogleの技術部門長も務めているレイ・カーツワイル氏です。 カーツワイル氏は、2005年、著書『The Singularity In Near』(邦題『ポスト・ヒューマン誕生』 NHK出版)で、シンギュラリティを「テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来たるべき未来のこと」「われわれの生物としての思考と存在が、みずからの作りだしたテクノロジーと融合する臨界点であり、その世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超越している」と説明しました。 そして、シンギュラリティは、主に遺伝学、ナノテクノロジー、ロボット工学が指数関数的に進化することで訪れると説き、その時期を2045年と予測。その過程では人工知能(AI)やロボットなどが人間の知性や能力を超えると説きました。また、のちに2029年にはAIが人間と同等の知能になるだろうとも述べています。 この論考を受けて、AIが人間の能力を超えるときがシンギュラリティであるというとらえ方もされるようになっています。
シンギュラリティはいつ起こるのか?
カーツワイル氏は、2040年代中盤には、1000ドルで買えるコンピュータの性能で1年間に創出される知能が、今日の人間のすべての知能よりも約10億倍強力になると予測。ここまでくると人間の能力が根底から覆り変容するとして、シンギュラリティは2045年に到来すると予測しました。 しかし、この「シンギュラリティ」という概念にはさまざまな見解が出されており、定義自体が定まっていません。また、AIが人間の知能と同等、ないし、人間の知能を超えるにはまだ相当な技術と年数が必要という見解などもあり、シンギュラリティが2045年に到来することに否定的な意見も多く出ています。シンギュラリティの到来によって世界はどう変わる?
カーツワイル氏の言うシンギュラリティ、あるいは、そこまでいかずとも、AIをはじめとしたテクノロジーがさらに発達した世界が訪れた場合、私たちの生活には次のような変化が起こることが予想されています。AIとの協業
今後、AIにできることが増えていくと、これまで人間が行っていた仕事の中で、定型的なものや単純作業はもちろん、より高度な仕事もAIを活用して自動化されたり、AIが人間に代替して行ったりするようになることが予測されます。 現時点では、AIは「判断」「臨機応変な対応」「共感」「0→1を生み出す」といったことができておらず、これらに関連する仕事は早々なくならないだろうと言われていますが、今後、人間はますますAIと協業して仕事を行うようになることは間違いないでしょう。 また、もしAIが人間と同等ないし人間を超える知能となれば、より一層AIとの付き合い方や役割分担、人間が担う仕事は変容していく可能性があります。
ベーシックインカムの導入
ベーシックインカムとは、生活に必要な最低限の金額を国民全員に給付する社会保障制度です。人間が行っていた仕事がAIに代替されるようになると、収入を得る手段を失う人が増え、貧富の差が広がることなどから、最低限の所得を保障するために導入が進むと考えられています。
人体の一部人工化
カーツワイル氏は、シンギュラリティが訪れた世界では、「ナノボット」が人体を変えていくと説いています。ナノボットとは、分子レベルで設計された、大きさがミクロン(1メートルの1000万分の1)単位のロボットで、「呼吸細胞」(人工の赤血球)などがあるとのこと。カーツワイル氏は、ナノボットを人体に送り込んで人間の知能を高めたり、加齢を逆行させたりできるようになると予測しています。