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2022.10.12

スマートシティとは?ICTを活用した持続可能な都市・地域のあり方

知っておきたいトレンドワード19:スマートシティ

都市・地域の課題をICTやデジタル技術で解決し、持続可能な「スマートシティ」をつくる取り組みが世界的に進んでいる。今なぜスマートシティなのか、スマートシティとはどんな街で、その実現によって私たちの暮らしはどう変化するのだろうか。

スマートシティとは

スマートシティとは、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」であると、スマートシティの実現を推進する国土交通省は定義しています。

なぜ注目されているのか

近年の、IoTやロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなど、社会のあり方に影響を及ぼす新しい技術の開発・進化には著しいものがあります。他方で、人口減少、都市への人口集中、少子高齢化、災害の多発、エネルギー消費量の増加、感染症リスクなど、都市および地域が抱える課題も顕在化しています。
そこで、これらのICT・デジタル技術をまちづくりに活かすことで、都市や地域が抱える課題の解決を図り、持続可能なまちづくりをしていこうという取り組みが、政府や自治体を中心に進められています。

なお、スマートシティという言葉は、国土交通省以外の機関や諸外国でもそれぞれに定義して使われており、明確な定義は定まっていません。ただし、抱えている地域課題をICT技術や各種データを用いて解決しながら運営される、持続可能な都市のあり方であることは、おおよそ共通しています。


スマートシティ構想

先述したとおり、スマートシティは、国をあげて推進されている取り組みです。内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省を中心に、Society5.0(仮想空間と実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)を先行的に実現する場として、全国の多くの都市・地域でスマートシティ実現に向けた取り組みが進められるようさまざまな後押しが行われています。「スマートシティ官民連携プラットフォーム」の立ち上げや、スマートシティ関連事業の選定、進め方のガイドブックの作成などが具体的な取り組みです。




スマートシティによってもたらされる変化

ICTの活用やデータの利活用などにより、スマートシティでは次のような生活の実現が期待されています。

・エネルギー、上下水道、リサイクルなどを地域内で最適管理
・災害の情報をリアルタイムで取得し、迅速な避難・復旧を実現
・医療・介護分野におけるデータ活用により、健康寿命を延伸
・地域の見守り支援により、安心・安全な街を実現
・e-learning、遠隔教育の充実
・いつでも、どこでも、必要な移動・配送サービスを実現
・金融取引をデジタルで完結し、キャッシュレス社会を実現




スマートシティ実現を支えるテクノロジー

スマートシティの実現においては、次の5つのテクノロジーの活用が期待されています。国土交通省都市局が2018年に策定した「スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】」をもとに紹介します。

通信ネットワーク技術とセンシング技術

「5G」や「LPWA」(Low Power Wide Area:消費電力を抑えて通信容量の小さい大量接続に適した無線通信技術)などの高度な通信ネットワーク技術と、センサー技術の発達により、これまで通信機能を備えていなかった車や家電、産業用設備、様々な日用品など、モノとモノとがネットワーク上で情報交換をすることができるようになってきています。いわゆるIoTです。

IoTの普及は、機器や設備の状態を確認する作業の省人化や、従来は取得することが難しかった多種多様なデータの取得を可能にします。例えば、センシング技術を用いることで、路面状態検知などインフラの老朽化対策における効率的かつ効果的な対策が期待されています。また、携帯電話利用者の基地局単位の移動・滞在情報や、各地に設置されたWi-Fiの利用情報などを個人が特定されないよう統計データに加工し、まちづくりや防災対策、出店計画、市場分析などに活用する動きもあります。


分析・予測技術

膨大かつ複雑なデータ群を同じフォーマットに落とし込み、相互に分析できるプラットフォームの技術や、人工知能(AI)によるビッグデータの解析技術などにより、多種多様なデータを高度に分析し、それを元に予測を行うことが可能になってきています。
これらの技術は、利用者数や人流を考慮した施設整備や老朽施設のメンテナンス効率化、渋滞予測による信号の切り替えなどへの活用が考えられます。


データの可視化技術

建築物を計画・調査・設計段階から3次元モデル化できるBIM(Building Information Modeling) /CIM(Construction Information Modeling, Management)という技術や、都市構造をさまざまな統計データから可視化するツール(i-都市再生)、VRなど、複雑なデータを視覚的・感覚的に理解しやすく提示できる技術により、まちづくりに関する合意形成の円滑化が期待できます。


上記を活用した新たな応用技術

上記の技術を活用した、自動運転、ドローン、ロボットなどの技術により、人手不足やより効率的なサービス提供などが期待されています。




国内外のスマートシティ

スマートシティの実現に向けた取り組みや、国内外の自治体・地域で行われています。国内と海外の事例を紹介します。

福島県会津若松市「スマートシティ会津若松」

会津若松市では、2013年より、「地域経済の活性化」「市民生活の利便性向上」「市民との情報共有の促進」の3つの目的のもと、スマートシティの実現に向けた取り組みを行っています。これまでに、スマートメーターを用いた消費電力のエネルギーマネジメントや、住民情報などを地図上に表示するGIS(地理情報システム)を活用した空き家対策やバス路線の最適化、水田ごとに適切な水位を設定し、自動で給水ができる水田水管理システムの導入などが行われています。
また、年齢・性別・家族構成など個人の属性に応じて、その人にとって必要な情報を表示するポータルサイト「会津若松+(プラス)」を開設。連携サービスとして、除雪車の位置と運行状況を見られる「除雪車ナビ」、母子健康手帳の電子化(乳幼児検診のデータから、発育曲線や予防接種予定日など市が保有している情報と連携)などに取り組んでいます。
今後も、ICT・デジタル技術を用いた、パーソナライズされた災害対応、オンライン医療の充実」、データ連携による「書かない行政手続き」などが計画されています。
「スマートシティ会津若松」の実現に向けた取組について



ポルトガル・リスボン市

ポルトガルのリスボン市は、自治体の情報システムをはじめ、空港や鉄道、警察など30以上の官民の機関から集められたデータを統合、管理、表示するプラットフォーム「リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム」を構築。事件発生時に最適な警察車両を迅速に派遣する仕組みや、市内にあるおよそ2000個のスマートごみ箱に搭載されたセンサーが、ごみ箱が一杯になると通知する仕組みなどをつくり、運用しています。
今後は、市内のバスルート・運行時間の最適化や、過去の交通データと気象データの分析を基にした交通渋滞予測などにも取り組むことが検討されているようです。



その他の事例

香川県高松市「スマートシティたかまつ」
兵庫県加古川市「加古川スマートシティ構想」


作成/MANA-Biz編集部