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グローカルとは?地方創生のカギを握る考え方
知っておきたいトレンドワード18:グローカル
経済・社会のグローバル化が進んだ今、とくに地方において「グローカル」の考え方が重視されるようになってきている。グローカルとはどのような考え方なのか?また、グローカル人材に求められるスキルとは。
グローカルとは
グローカル(glocal)とは、「global(地球規模の)」と「local(地域的な)」を合わせた造語で、地域性を考慮しながら地球規模の視点で考え、行動することを表した言葉です。 1980年代に、日本企業の海外展開方針として、国・地域ごとの文化などに考慮して製品やサービスをカスタマイズすることでグローバル化とローカル化を同時に進める「グローカリゼーション(glocalization、グローカル化)」という考え方と造語が生まれました。 現在は、「グローカル=地球規模で考え、地域で行動すること」という意味合いで、企業の海外展開のみならず、国内の地方創生などの文脈でも使われています。 また、地域の課題解決や、SDGsの達成においても、グローカルな視点で考え、行動することが一つの方法と考えられています。
グローカル企業とは
グローカル企業とは、地域に根ざしながら、世界的に事業を展開している企業のことです。地域ごとの特性に合わせて世界各地に拠点を持ち、国・地域ごとの言語や文化に応じた事業を展開している大企業や、国内の特定の地域に密着しながら世界に事業を展開する中小企業などがグローカル企業と呼ばれています。 グローカルな取り組みの例としては、次のようなものが挙げられます。
●食品メーカーや外食チェーンによる、国や地域の食文化に応じた風味・メニューなどのカスタマイズ
例)ある調味料メーカーは、日本で製造・販売している商品をそのまま海外に展開するのではなく、展開先の国・地域の食文化や嗜好に合わせて、「肉/魚介類を現地でよく調理される方法で調理する際に合う風味・調合」の商品を開発し、展開しています。●ゲームやアプリケーションの多言語展開
例)アプリケーションやゲーム開発企業は、テキストを表示する言語や、通貨記号の使用や日付の表示の仕方などを特定の地域や言語に合ったものにする、内容について、現地の法律や文化・宗教などに応じた修正を加えるなどしたうえで展開しています。●伝統工芸品、農産物、日本酒・ワイン等地域の特産品の生産・製造企業による海外展開
例)日本酒の醸造元が、「飲みやすさ」「フルーティさ」など、外国で受け入れられやすい特徴を持った銘柄を海外に展開したりしています。今なぜ、グローカル人材が必要とされているのか
今、主に地方創生の観点から、グローカルの考え方やグローカル人材が必要とされています。
グローカル人材とは
グローカル人材とは、国際社会で通用する能力やグローバルな視点・経験をもって、地域社会や地域経済の活性化や持続的発展に貢献する人材のこととされています。 地元の企業や自治体に就職して地域の産業や地元企業の製品・サービスと海外のマーケットとの架け橋になったり、インバウンドに対応できるような地域のグローバル化を担うリーダーとして活躍したりすることが期待されており、経済産業省や文部科学省が、グローカル人材の育成の重要性を説いています。 また、地方大学においても、地方創生を担う人材育成の一環として、グローカル人材の育成を重視する大学が出てきています。
グローカル人材が求められる背景
今、グローカル人材が必要とされている背景として、次の2つが挙げられます。
1. 地方創生の必要性
国内の人口減少などに伴い、国内市場の縮小や、地方の過疎化・人手不足が進行しています。各地の産業・経済も、国内市場だけを見ていては持続的発展が見込めないため、地域の産業を海外にも展開していくことで、収益と人材の確保を図ることが必要と考えられています。その際に、グローカル人材が地域と世界をつなぐことが期待されています。2. 地域のグローバル化への対応
国内の外国人人口の増加や、インバウンド需要の取り込みという観点から、多様な人々が共生できる地域づくりや、地域の魅力の外国への発信などが各地で必要とされています。グローカル人材は、その担い手としても期待されています。グローカル人材に求められるスキルとは
グローカル人材に求められるスキルとして、大きく次の2つが挙げられます。
1. 異文化理解とコミュニケーションスキル
グローカル人材に求められるのは、地域の産業や地元企業と海外マーケットとの橋渡し役ですから、語学力はもちろん、海外の異なる文化や価値観を理解し、外国人とコミュニケーションをとるスキルは必須です。2. グローバルな視点で地域や地元産業の魅力を発見し、海外に発信・展開する力
地域の活性化や持続的発展に寄与する産業や魅力を発見したり、地域の課題を解決するための方策を見出したりする力と、それらを海外の必要な国・地域に合わせて発信・展開する力も重要です。グローカル教育と地方創生
地方創生の担い手としてグローカル人材を育成する取り組みを、文部科学省が始めています。高校に対する「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」です。「グローカル型」という枠を設け、グローバルな視点を持って地域を支えるリーダーを育成する取り組みを行っている高校が事業の対象校に指定されています。 「グローカル型」の指定校では、英語力の向上はもちろんのこと、海外の高校との交流や地域の魅力や課題の発見・解決を並行して行い、グローバルな視座を得ながら地域の課題解決に必要な課題発見力や実践力を磨く取り組みなどが行われています。