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今回は、作成した研修計画企画の承認を得るためのテクニックについて考えたいと思います。
研修担当になると、「よし、頑張るぞ」と気合いを入れて企画を考える人が多いと思います。会社の人材育成という重要な仕事を任され、意気込んで企画を立てる。そして、研修計画をしっかりと考え、研修内容の詳細まで記載した資料をつくり、あとは役員会議で承認を得るだけとなりました。
しかし、役員会議に臨み、一通りの説明を終えたところで、ある役員にこう言われてしまいます。「細かく計画してもらうのはいいんだけど、ちょっといろいろありすぎてよく分からないなぁ」。これは非常によくあることでしょう。
全員に研修を受けてもらう計画を立てると「もう少し絞った方がいいんじゃないか」と言われ、一部の人に受けてもらう企画を出すと「なんで一部の人だけなのか」と言われる。これもよくある反応です。
では、このような状況に陥らないためにはどのようにすればよいのでしょうか。
まずは、意思決定に関わる役員がどのようなことに興味をもち、どんな視点で判断するかを把握しておく必要があるでしょう。一般的に、役員は自分の受けもっている部門や役割の視点でモノゴトを見る傾向があります。
たとえば、営業系の役員は「この研修を受けたら営業力が上がるのか」という視点で見ると思いますし、財務系の役員は「そんなに予算を増やして大丈夫なのか」という視点で考えるでしょう。こうした部門ごとの"クセ"を把握した上で、その役員がどのように思うかを考えながら研修企画を説明するようにしましょう。
とは言っても、役員全員の関心を満足させることは難しいものです。その場合は、役員会議で発言力のある人は誰かを把握し、その役員の関心をまず考慮するようにします。
また、役員会議というものは「総論賛成、各論反対」になりやすいものです。会社のビジョンがこうだからこういう研修を企画した、という理想的なロジックで語っても、「でも現状の課題は」と反論されかねません。ですから説得の仕方として、「あるべき人材像はこうだが、現状ではまだ○○の部分が弱い、なので今回は研修をこう企画した」、というように、「ビジョン」と「課題」の両方に配慮していることを伝えるのも有効です。
ほかにも、研修企画の承認を得るためにできることがあります。
1つは、役員への事前の相談です。いきなりすべての詳細までつくり込んだ企画を提案するのではなく、研修計画が8割がたできた段階で一度相談に行くのです。そしてその役員が気にしそうな点をこちらから質問し、もらったコメントを反映した形で企画を完成させれば、承認も得やすくなります。そもそも人は相談を受けると力を貸してやりたいと思うもの。役員が協力してやりたいと思ってくれる効果も大きくなります。
もう1つは、承認を2段階に分けるという方法です。例えば、まず1回目で人材育成方針(WHY)について説明し、合意を得る。そのときに具体的な研修内容に関して意見を聞いておき、2回目でそれを踏まえた研修企画(WHAT・HOW)を提示する。1回目で聞いた意見を反映してつくりました、と説明すれば聞き手の役員も判断しやすいでしょう。
さらには、「まずお試しで始めませんか?」というスタンスで提案するのもアリです。やはり人材育成もPDCAです。やってみるとまた課題も出てくると思いますので、とりあえず1年これで回してみませんか、という提案のしかたで、研修をスタートさせる合意を得るという方法も大事かもしれません。