ライフのコツ

2014.02.19

イギリスの小学校は教科書がない?!

世界の学び/身軽に通えるイギリスの小学校

世界の教育情報第3回目は、イギリスからのレポートです。ロンドン市内のセント・ジョーンズウッドで3人の男の子を育てながら、キャリアコンサルタントのお仕事をされているオダギユイさんから3回にわたり、イギリスの教育や子育て情報をお伝えします。

日本よりも早く始まるイギリスの義務教育
我が家には、7歳、5歳、3歳の男の子がいます。
長男は日本では小学1年生ですが、イギリスではYear2という学年。二男は日本では幼稚園年中組、イギリスではYear1。三男は日本では春に幼稚園年少の年齢ですが、イギリスでは夏(2014年9月)から小学校のReceptionというクラスに入学で、兄達と同じ学校に通う予定です。

このように日本に比べると早い時期から小学校に通い始めるイギリスですが、Receptionクラスでは、森に探検に出かけたり、家ではなかなか出来ないようなダイナミックな遊びを通して友だちとたくさんの経験をすることから学ぶことが主で、小学校に通いだしたからといって突然机に向かって一日中勉強をし始めるわけではありません。しかし、あそび中心のカリキュラムといっても、通学後の朝の時間は、勉強時間になっていて、Phonics(アルファベッド一文字ずつに結びついた発音を身につけ、正しい読み方を習得させる学習法)やアルファベッドを習うところから始めて、ちょっとずつレベルアップしていきます。
Receptionクラス卒業時には、「アルファベッドが書けること」「数字を1から20まで数えることが出来ること」「Phonicsが身についていること」が標準レベルとされており、Year1に進級するとReceptionクラスで得たことをベースにした授業が始まります。

最初は、早い時期に学校に通いだすイギリスの子たちは大変だなと思っていましたが、学校のカリキュラムや学校生活からこどもたちが得ていることを見ていく中で、イギリスの教育への理解が深まり、学ぶべき点が出てきました。多国籍のこどもたちにとって、義務教育が早く始まるメリットがあるような気がします。

今では、日本の教育との違いを楽しみつつ、日本とイギリスそれぞれの教育の良いところをうまく取り入れていけたらいいなと思っています。
ビートルズで知られるアビーロードとアビーロードスタジオ(手前左)が近所にあります。
2階建てバスは路線が充実しており、とても便利です。


イギリスの小学生は教科書を持たない?!
日本で生まれ育った私が、こどもたちをイギリスの小学校に通わせ始めてからは毎日が驚きの連続でした。

まず、教室が日本の小学校の雰囲気とは全く違います。座席表通りに黒板に向かって座るスタイルではないうえに、個人の机と椅子はありません。教室にあるグループ用の机に、グループごとに座ります。 授業中、先生が何かを説明する時にはホワイトボード(スクリーンにもなる)と先生を囲むように床に座って話を聞き、説明が終わって作業をする時にはグループの机に戻ってペーパーワークなどの作業をするのが通常のスタイルです。
教室の装飾もとってもカラフルかつ華やかで、壁一面に様々な展示がしてあります。
装飾は、生徒たちの作品、先生が作ったもの、今のカリキュラムで扱っているもの等様々ですが、私が一番興味深く感じたのは、生徒たちのルーツが指し示してある世界地図でした。イギリスでは、生徒たちのルーツはとても多国籍で、1クラスに15~20くらいの国籍の子が集まっていることもよくあります。従って、それぞれのルーツを生徒の写真と共に指し示してある世界地図は、世界中に印がつけられています。
教室の前には、2クラス共有のワーキングスペースがあり、 制作をしたり、本を読んだり、時には授業をしたりしています。 各生徒が自由にのびのびと学べる工夫がこのようなトコロからも感じられます。
そして、イギリスの小学校で、何よりも驚いたのは教科書がないことです!文房具も学校のものを使うので、通学の鞄には宿題のみが入っている状態です。

こどもたちは軽い鞄なので通学は楽そうですが、親は学校でどんな勉強をしているのかを教科書から追うことが出来ないため、常にこどもから学校でやっていることを聞いたり、宿題から判断する必要があります。
時にこどもたちは、学校の話しをたくさんしてくれます。その話がとても興味深いので、私もたくさんの質問をすることになります。結果、親子のコミュニケーションとともに、彼らの日本語の維持に繋がっている気がします。


学校によって違う教育レベル
学校で出る宿題は、全学年を通して必ずReading (各自の音読のレベルに合わせた本が一日一冊提示される)の宿題があります。それに加え、Year1からは曜日ごとに決められたカテゴリーの宿題が出ます。月曜日はSpelling、火曜日と水曜日はMaths、木曜日はliteracy、金曜日はcreative writingといった感じです(Year2の場合)。
この宿題の内容や量は通う学校によってかなり違います。
長男と次男は公立の小学校に通っているのですが、学校によってカラーが全く違い、教育方針やカリキュラム、学業のレベルも異なっています。
従って、イギリスでは、学区や学校選びがとても重要になります。イギリスの学校はOfsteadという第三者による学校評価機関によって評価され、ランク付けされているので誰でもその学校のレベルや様子を知ることが出来ます。学校選びの際、参考にするのがOfsteadの結果というわけです。
ただし、日本の小学校と同じように学区や兄弟枠によって、入学が優先順位付けされるので、希望校に入る為に学校の近くに引っ越すこともめずらしくありません。
妊娠するやいなや、良い学校のあるエリアに引っ越す夫婦も多いようです。

こどもに、より良い教育を受けさせたいと思う気持ちはどの国でも同じですね。

オダギ ユイ

大学卒業後、㈱NTTドコモに入社。スマートフォン系の新規開発部所属時に、心理系の勉強を開始し、産休育休中に各種専門資格取得。自らの復職経験から、ワーキングマザーのマインド支援の必要性を感じ、キャリアコンサルタントとして個別セッションやセミナー開催するオヤコラボ、ワーキングマザーのお悩み解決を主旨としたワー育.jpを立ち上げる。2012年春に夫の転勤により、家族で渡英。ワー育.jp London支部を立ち上げ活動中。
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