組織の力

2019.12.06

カゴメ株式会社

コミュニケーションを高める取り組みで業績を上げ、残業削減を導いたオフィス

トップ画像:ナチラルテイストの家具が並ぶ、カフェスペース。リビングのようなくつろいだ雰囲気を生み出すため、家具やポスターなどもすべてプロジェクトメンバーが選定しました。

1_org_083_01.jpg
支店長席からは執務エリアすべてが見渡せます。支店長と営業推進部のみ固定席で、他の3つの部はグループアドレスです。部に割り当てられるエリアを1週間交代でローテーションし、週に一度は完全フリーアドレスにすることで、部門間の交流も図りやすくしています。

 

 

 

支店長赴任の日に感じた
活気のないオフィスへの違和感

カゴメ株式会社様(以下、カゴメ)は、1899年にトマトなどの西洋野菜の栽培から始まった老舗企業。「『トマトの会社』から『野菜の会社』に」を長期ビジョンとして掲げ、「働き方の改革は生き方改革」という経営者の思いのもとダイバーシティの推進、労働時間の削減に取り組んでいます。
 
そんななか2016年の春に大阪支店長として赴任した宮地雅典さんは、オフィスの雰囲気にショックを受けます。執務スペースは暗く、社員同士の会話が少ないためオフィスが静かすぎて取引先との電話も廊下でするほど。来訪者への挨拶もなく、執務スペースに販促物やサンプルが散乱している状態で、業績も全国7営業拠点のうちで良いほうとはいえませんでした。
 
  • 壁面には「野菜の会社」を感じさせるデコレーション。野菜関連の書籍も多数展示。
  • 打ち合わせコーナーは「野菜の部屋」と「トマトの部屋」。ネーミングも野菜の会社らしさを感じられるようにしています。 

 

 

  • オフィスのコミュニケーションのコアとなるカフェ。
  • 打ち合わせやリフレッシュに活用されるだけでなくカウンターを中心にちょっとした会話が生まれています。
 
 
 

自分たちでつくったビジョン
「日本一“オモロい”大阪支店へ」

活気に乏しく、部門を越えた仕事への関心が希薄なことを感じた宮地さんは、リーダーの持つ行動特性が組織の風土を作り出し、それが組織の業績を左右するという信念のもと、「負けない体質」に風土変革していくことを決意します。大阪支店の弱点を分析すると、反応力、洞察力、チームワークカ、リーダーシップカ、スピードカの不足があり、それらはコミュニケーション不足に起因していると考えました。そこで「5つの弱点を克服し組織風土を変革する」「リーダーシップ・スタイルを革新する」という方針を打ち出します。
 
当時のダイバーシティ委員会のリーダー藤原薫さんは入社以来10年間大阪支店一筋。宮地さんからの指摘に今まで疑問を持たなかったことが非常に悔しかったと言います。社員の悩み事を把握し解決することで組織風土を変えたいという思いでワークショップを企画。
 
  • 社内外を問わず来訪予定者の情報を「きはるひと」ボードで共有します。当日はサイネージの掲出で歓迎を表すとともに社員にも訪問者の情報を伝えます。(「きはるひと」は大阪ことばで「来られる人」の意味。)
  • オフィスにガチャガアチャ? 実は100円でコーヒーポットを購入するとお菓子がついてくる仕掛け。いろんな種類が入っているので会話のきっかけになります。
 

1_org_083_11.jpgのサムネイル画像コピー機、ゴミ箱、作業台、文房具置き場を集約したスペース。業務上立ち寄ることが多い機能をまとめることで、社員の接点を増やします。

 
 
今まで支店社員が一堂に会する機会はなく、本当に集まってくれるのか開催当日まで不安でたまらなかったそうです。ところが9割以上の社員が出席して悩みや思いを熱く語りあうこととなりました。
 
職場環境の改善を図る組織は、ダイバーシティ委員会と支店サービス向上プロジェクト、カゴメ労働組合の3つがあります。ワークショップから見えてきた課題を整理してそれぞれに、コミュニケーション向上、オフィス環境の改善、制度や仕組みの提言を担うよう役割を明確にしました。
 
年齢、性別、部門もバラバラな10名で構成するダイバーシティ委員会では、コミュニケーションを高めること、それを通じて社員の育児や介護に関する悩みを解決することに取り組みました。目指すのは、多様な価値観・制約を持つ大阪支店メンバー全員の能力が発揮され、活躍できる環境づくりです。導いたビジョンは「目指せ!みんなが働きたい支店NO.1!~日本一“オモロい"大阪支店へ~」。社員同士の理解を深めるためにワークショップや定期的な料理教室などを実施すると累計334名が参加し、お互いを知り連携を深めていくことができました。しかし非日常の場だけではなく日常的にコミュニケーションを高めて成果につなげるためには、25年以上変化がないオフィスの抜本的な見直しが必要だったのです。
 
  • 6席ある集中席は見晴らしの良い窓際のスペース。1回2時間までの利用がルールです。
  • オフィス内のテストキッチン。顧客へのプレゼンテーションのほか、社内料理教室も。キッチンユニットは子供でも使えるよう電動昇降式を採用しています。
 
支店サービス向上プロジェクトは、ダイバーシティ委員会とともに「業務上のコミュニケーションを活性化することで、成果と影響力を発揮し、強い大阪支店を実現する」というオフィスのコンセプトを策定。コミュニケーションを図りやすく、自分で場所を選んで働くことで働き方改革を促進し、「野菜の会社」を感じられるようにすることを軸にオフィスを計画しました。「フリーアドレスについては、自席がなくなる事に対しての不安の声もありました」と、支店サービス向上プロジェクトの笠井多恵子さん。書類や物品を整理すると大型カゴ台車20台分ものゴミが出ました。メンバーの圓鍔晴美さんは「こんなに要らないものに囲まれてたんだなあ、と片付いていくことに感動しました」と語ります。
 
 
 

「大阪支店を見習いたい」
全社に広がるオフィス改革

当初は不安を感じていた人も新しい働き方になじみ、新年度のダイバーシティ委員に立候補するなど自ら進んで動く風土が生まれてきました。その結果、売上の前年伸長率は全営業拠点のナンバー1を獲得し、業績という確かな効果を示すことができました。また残業時間は1割以上も削減。「フリーアドレスで気兼ねなく帰りやすくなったこともあるかもしれません」と営業推進部長の井出崇弘さん。この改革が全社に伝わり、他の拠点でも取り組みが始まっています。
 
新しいオフィスでは「カゴメEXPO」と題した家族見学会が開かれ、家族も含めた交流が生まれました。「社会に開かれた大阪支店」を目指し、さらにコミュニケーションの輪を広げていきます。
 

 

Feature!

120周年記念に社員全員でオリジナルダンスを踊りました!
1_org_083_14.jpgのサムネイル画像2019年に創業120周年を迎えることを記念してオリジナルソング「進めカゴメ」を制作。国内全事業所ほかグループ会社を含むカゴメグループの役員・従業員約2,400名でダンスを踊りました!(web上で公開中)普段は接することの少ない他拠点のメンバーとも一体感を感じることができました。大阪支店では週1度のお掃除タイムのBGMも「進めカゴメ」です!

 

 

1_org_083_15.png

1_org_083_16.png

『オフィスのチカラ vol.14』

この記事は、コクヨ株式会社が発行する冊子『オフィスのチカラ vol.14』に掲載されたものです。冊子『オフィスのチカラ』をご希望の方は、こちらのフォームの「カタログのご請求フォーム」の「家具単品カタログ」の枠に『オフィスのチカラ vol.14』希望とご記入の上、ご送信ください。

オフィスのチカラvol.14より転載