組織の力

2021.05.17

地方でも優秀な人材に選ばれる自由な働き方

エンジニアのパフォーマンスを最大化する組織づくりとは

新型コロナウイルス感染拡大以前から、時間・場所・雇用契約に制約のないフルリモートでフレキシブルな働き方を取り入れてきたK.S.ロジャース株式会社。自由でフラットな組織のマネジメントで大切なことや、コミュニケーション方法について、K.S.ロジャース代表取締役社長CTOの民輪一博氏にお話を伺った。

エンジニアのパフォーマンスを
最大化するための組織づくり

K.S.ロジャースはサービスの新規開発やCTOハンズオンなどを手掛けるエンジニア集団。エンジニアのパフォーマンスを最大化するため、2017年の創業当初からフレキシブルな働き方を採用しているという。

「組織のムダをなくし、時間・場所・雇用契約といった労働における制約をすべて取り払いました。人はルールで縛らないと働かないという固定観念を打ち破り、オフィスなし、勤務時間の規定なし、雇用形態のルールなしで、プロジェクトはフルリモート、副業も自由です」と民輪氏。

ロジャースの雇用形態は主に4種類。裁量労働制で働く「正社員」、業務委託契約を結ぶ「フリーランス」や「副業」のほか、月の半分をロジャースの仕事、残りの半分は他の会社の仕事をする「フリーランス正社員」もある。自分がどのような雇用形態で会社にコミットするのかを自由に選び、切り替えも自由だ。その自由な働き方やエンジニアにとって働きやすい環境づくりの追究が功を奏し、着実に組織として成長し、働きやすい職場としてエンジニアからの評判も上々だ。

「エンジニアにはどちらかというと夜型のワーカーが多かったり、会社ではなくプロジェクト単位で仕事をしたいという志向の人が多かったりすることもあり、すべてが自由という弊社のスタイルは働きやすいと好評です。我々のビジョンや想いに共感してくれた人が集まってくれているのだと感じています」




地方にイノベーションを起こす
社会インフラをめざす

ロジャースがこのような働き方を採用する背景には、地方でのエンジニアの採用難がある。

「私がこの会社を設立した2017年当初はまだそれほどリモートワークが普及しておらず、地方の企業にとって優秀な人材の確保が難しい状況にありました。また、スタートアップを立ち上げたくても、その基盤となるのはやはり人材。人材の地域格差に課題があると強く感じていました」

「そこで、場所や環境に左右されず、自由に新規事業を進められる社会の実現に向けて、地方にもイノベーションを起こす社会インフラとなるべく、この会社を立ち上げました」

1_org_145_01.png さらに「エンジニアはフルリモートに親和性の高い職種です。私自身、前職のベンチャー企業で、フルリモートでもチームをマネジメントできたという成功経験があり、このスタイルでもビジネスは成り立つと確信していました。日本ではエンジニアの仕事スタイルは受け身で、言われたことだけをやる人だというイメージをもたれがちですが、自律的に働ける環境があれば、ワーカーも主体的に考えて自らアクションを起こすようになるはずだと考えています」と続けた。




フレキシブルな組織マネジメントで
重視している4つのポイント

フルリモート、フルフレックス、さまざまな雇用形態のメンバーがいるチームでプロジェクト運営をしていくとなると、マネジメントにも工夫が必要だ。民輪氏はフレキシブルな組織をマネジメントしていくうえで重視していることは4つあるという。

①情報の量や密度をできる限りフラットにする

1_org_145_02.jpg これは、「組織の上の方の人に情報が集中し、メンバーは知らないといった情報格差が起こることで不満が生まれるのを防ぐためです。セキュリティ面とのバランスは取りますが、どのような雇用形態のワーカーでもアクセスできるように情報はなるべく集約しています。また、意見や議論はトップダウンもボトムアップも両方活発に起きるように、フラットにやり取りできるような雰囲気づくりを心がけています」



②コミュニティの雰囲気を大切にし、活性化に努める

1_org_145_03.jpg「また雰囲気という点では、正社員やフリーランスなどいろいろな立場の人がいる中、カッチリとした会社というよりもゆるいコミュニティ的な雰囲気が強い組織です。このコニュニティの雰囲気を大切にしながら、コミュニケーションの活性化に力を入れています。現在、コミュニティ形成専門の部署を立ち上げて、活性化のためにPDCAを回しながら試行錯誤しています」

「失敗した取り組みとしてランチ会があります。フルフレックスということもあり、仕事をする時間帯が人それぞれ違うため、ランチの時間も当然バラバラ。メンバーが集まらず失敗しました(笑)。うまくいったものでは、新しく入ってきた人に会社紹介やメンバー紹介などをしながらオンボーディングで話す場を設けたのはよかったですね。現在125名ほどのメンバーがいて、ありがたいことに社員数はどんどん増えてきていますが、コミュニティの雰囲気を保つためにも、一緒に働きたいと思えるメンバーかどうか自分の目で確かめるため、採用面接には必ず自分も出るようにしています」



③会社への不安を吸い上げる機会として1on1の実施

1_org_145_04.jpg「現在は人事担当とメンバーで定期的に実施しています。リモートで仕事をしている分、会社への不満を吸い上げる機会をもつことは非常に重要だと考えています。仕組みづくりはまだまだこれからの会社なので、こういった場で挙がってくる声を元にどんどん見直していっています」

「プロジェクトに対する業務的なフィードバックはプロジェクトの振り返り会で共有するので、1on1で話すのは主に会社への要望や現状の不満、逆に会社からの人事評価や目標のすり合わせ、およびフィードバックなどですね」

また、「仕事はすべて遠隔なので、仕事の質の担保やマネジメントの点から、プロジェクトの進め方を画一化し、進捗もできるだけ見える化して共有しています。こうして、遠隔でも仕事をしやすくすると同時に、この会社で仕事をするうえで大切にしたいことや行動指針も明文化しています」と補足した。



④自分が一番働きやすい環境やQOLを
ワーカー各自が自分で整える

1_org_145_05.jpg「自分が一番働きやすい環境は人によって違います。会社としては、最もパフォーマンスがあがる環境をワーカーが各自用意するための手当てとして毎月2万5000円を上限として実費支給しています。コワーキングスペースを契約するために使ってもいいし、健康を維持するためにジムに通ってもいい。時間や場所の制約がないので、旅行しながら仕事をしてもいいわけです。エンジニアは、プロセスでは評価されず、アウトプットが重要なので、結果を出すための環境づくりに会社としてもコミットしたいと考えています」



民輪 一博(Tamiwa Kazuhiro)

K.S.ロジャース株式会社代表取締役。京都大学大学院工学研究科電気工学専攻卒業。学生時代に学生ベンチャーを立ち上げ、卒業後にもAI系スタートアップに参画した後に、2017年にK.S.ロジャース株式会社を設立。政府機関や大手企業のシステム開発などを手がける。現在、リモートワークでのマネジメントに取り組む中間管理職を対象にしたサポートツールを開発中。


K.S.ロジャース株式会社
「エンジニアにとって最も働きやすい環境を作る」をミッションに掲げて2017年に創業。WEB・アプリケーションの新規開発・運営支援、CTOコンサルティングなどを手がける。従業員である約70名のエンジニアがフルリモート勤務を行い、「フルフレックス・雇用形態の切り替え自由・副業自由」というフレキシブルな働き方を実現。

文/中原絵里子