組織の力

2022.02.14

リコージャパン株式会社神奈川支社のオフィスカイゼン活動

オフィスカイゼン活動を長く続けるために大切なこと①

オフィスは、生きた人間が日々活動しはたらく場だ。より快適に過ごせるよう、日々進化していくことが望まれる。そして、オフィスカイゼン活動は、オフィスで過ごす人々のほんの小さな気づきや不満を、よりよいカタチに変えていく地道な活動だ。これを長く続け、定着させるにはどのようなことが大切なのか。今回は、リコージャパン株式会社神奈川支社の取り組みからそのヒントを探る。

オフィスカイゼン活動とは

移転などを機にプランを練り上げてリニューアルしたオフィスも、使っている中で「ここはもっとこうしたいな」「はたらき方が変わってきて、現状に少しそぐわなくなっているな」など、感じることはないだろうか。

オフィスカイゼン活動は、より快適なオフィスにしていくため、人々のほんの小さな気づきや不満を、より良いカタチに変えてオフィスを進化させていく活動だ。元々は、トヨタ自動車が仕事の生産性を上げるために日々の細かな業務改善を行ったことがヒントになっている。
現在コクヨでも、全国30のライブオフィス (※1) の全てでオフィスカイゼン活動を行い、現場目線からオフィスをより快適に進化させている。

オフィスカイゼン活動は、たとえば文具や備品の管理や配置などを少し工夫することで、より使いやすく快適に変えていく地道な活動だ。これを長く続け、定着させていくには、どのようなことが大切なのか。
今回、長くオフィスカイゼン活動を継続している2社にお話を伺い、それぞれの活動を支え、発展させてきたものは何か、そのヒントを探った。

※1:ライブオフィスとは、コクヨが実践している見学できるオフィス。実際にコクヨ社員が働いている様子を見てもらいながら最先端のオフィスと働き方を提案する場。




足を運んでいただいたお客さまに
気持ちよく過ごしていただくために

リコージャパン株式会社神奈川支社のオフィスカイゼン活動は、2008年に神奈川支社トップのリーダーシップによって開始された、女性社員によるCS(顧客満足)活動活性化プロジェクトが原点となっている。

社内実践事例を通して、お客さまの価値創造へのお役立ちを目指したライブオフィス「ViCreA(ヴィクレア)」 (※2) を展開しており、プロジェクトの理念は「足を運んでいただいたお客さまに気持ちよく過ごしていただき、また来たいと思っていただけるおもてなし」というものだ。
すなわち、お客さま満足度を高めることを基本的な視点としつつ、これを機軸に、お客さまに対する社員の行動変化と社内環境カイゼンの双方を実現することを目指している。

※2:Value innovation Creative Area(ワークスタイル変革へのチャレンジをお客様に体感していただく空間)の略




小さな気づきを大切にアイデアを出しあう

2007年12月にスタッフ部門内にプロジェクトチームが創設され、2008年11月より、職種・部門を超えたメンバーによるCS活動活性化のための女性チームとして活動を重ねてきた(2021年12月現在7名)。今年で活動15年目を迎える長寿プロジェクトだ。

毎月実施のミーティングでは、メンバーの「小さな気づき」を大切に、情報交換やカイゼンへのアイデア出し、ディスカッションを行い、実装にいたる。
また、メンバーの上司は全員プロジェクトのオブザーバーであり、活動に対してちょっとした相談をしたり協力を得るハードルが低く、風通しのよい運営体制となっている。




最初は、お客さまへのおもてなしから始まった

当初、お客さまへのおもてなしとして行っていたのは、おしぼりやドリンクのサービス、暑い日の扇子の貸し出し、お帰りの時に取り違えのないよう工夫されたコート掛けや傘カードのお渡しなど、主にモノを通したサービスだった。

それらには全ておもてなしの意味が込められているが、お客さまに対応する社員全員がそれらを理解し、お客さまと会話できるようにならないと意味がない。そのためおもてなしのポイントをまとめたメール(ViCreAトピックス)を週1のペースで全社員に配信するなど、社員への浸透を図っていった。




おもてなしの心はどんどん広がり、
オフィスカイゼン活動へとつながっていった

こうした地道な活動の積み重ねが次第に「お客さまを、もっとキレイなオフィスでお出迎えしたい」という社員の意識向上につながり、おもてなしの領域は、受付、挨拶、安全衛生、典型的なオフィスカイゼン活動であるオフィスの5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)等にまで広がっていった。

たとえば「受付」の領域では、お客さまにおもてなしの気持ちを伝えるため、季節や気候に合わせた手書きのメッセージを添えたウェルカムボードを設置したり、社員全員が行き届いた受付対応ができるようにお客さま対応の手順をわかりやすく受付デスクに表示する等の取り組みも行っている。

「オフィスの5S」領域では、お客さまにいつでもきれいなオフィスを見てもらえる状態に整えるため、会議室の全ての椅子の足に部屋名を書いたシールを貼り、よそから持ってきた椅子を誰でも簡単に正しく戻せるしかけを取り入れている。

  • 来客を温かく迎えてくれる手書きのウェルカムボードには、季節にあったメッセージが添えられている。
  • 会議室の椅子にはすべて部屋名のシールを貼り、他の部屋から借りてきても迷わずすぐに片づけられるようにしている。




活動内容の共有と
社員・お客さま満足度アンケートを軸に、
活動のPDCAを回し続ける

こうした活動は社員がいかに自分ごととして受け入れ、日々実施してくれるかが大切だ。そのためにこまめな活動内容の共有と定期的なアンケート実施による振り返りを行っている。 活動内容の共有では、実施したおもてなしやカイゼンのポイントを写真やイラストでわかりやすくまとめ、週1のペースでメールで配信するほか、半期ごとに振り返りの報告も行なっている。

また社員(年に一度)とお客さま(随時)にアンケートを実施し、社員への浸透度合いや要望、アイデア、お客さまの生の声などを直接集めることで、活動内容が一方向にならないよう配慮している。プロジェクトメンバー、社員、お客さまがつながりながらさらに活動をレベルアップさせていけるようPDCAを止めないことが大切だ。 

1_org_157_03.jpg おもてなしやカイゼンについてまとめた冊子「ViCreAのたね」。社員やお客さまに取り組みについてお知らせしている。




樋口 美由紀(Higuchi Miyuki)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/THE CAMPUSオフィスカイゼン委員会ファシリテーター
総合商社、教育企業において顧客向けサービス事業に従事後、コクヨ入社。経験を活かし「人に寄り添い成長を支援する事業」として幼児教育事業を新規に立ち上げ、教育プログラム開発や人材育成、顧客対応などに携わる。その後「ダイバーシティ」「ウェルビーイング」をテーマに、人生100年時代の企業とワーカーのよりよいあり方をリサーチ。現在、2021年2月に品川に新しくオープンしたコクヨのニューオフィス「THE CAMPUS」にてオフィスカイゼン委員会ファシリテーターとして、オフィスカイゼン活動にも携わっている。