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2022.07.21

リカレント教育とは?人生100年時代を生きるための「学び直し」の重要性

知っておきたいトレンドワード15:リカレント教育

変化のスピードが速い現代において、長く働き続ける、また、仕事で成果を挙げていく上で知識・技術の更新は不可欠となっている。その際の鍵となる「リカレント教育」とは?

リカレント教育とは

リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあとも、個々のタイミングで再び教育を受け、そこで得た知識・技術をまた仕事で発揮することを繰り返して仕事に必要な能力を磨き続ける、そのための教育や仕組みを表す言葉です。
「リカレント(recurrent)」は、「循環する」「再発する」という意味の形容詞で、「学ぶ」と「働く」を循環して知識・技術を磨いていくさまがこの言葉で表現されています。

社会人になってから仕事に必要な知識や技術を学ぶためにリカレント教育を受けることは、「社会人の学び直し」とも呼ばれています。

リカレント教育の歴史

リカレント教育は、もともとは、義務教育や基礎教育を終えた後も、個人が全生涯にわたり労働や余暇などの活動と教育を交互に行うという考え方で世界に広がりました。1969年にスウェーデンのパルメ教育相がこの考え方を国際的に紹介し、それをOECD(経済協力開発機構)が採用、1973年に「リカレント教育-生涯学習のための戦略-」報告書を公表したことで広く認知されるようになったのです。

その後、各国に取り入れられる過程で経済・社会環境の変化などの影響を受け、考え方や理念が変容していきました。

日本では、2010年代後半からリカレント教育への注目が高まっていますが、そこで言われるリカレント教育とは、先述したように、主に職業能力を向上させるための教育やその仕組みのこととされています。


生涯学習との違い

生涯学習とは、人々が生涯に行うあらゆる学習、例えば、学校教育や社会教育、文化活動、スポーツ活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習のことです(文部科学省の定義より)。リカレント教育の当初の考え方は、生涯学習と同義と言えるでしょう。

一方、現在の日本においては、先述したとおり、リカレント教育は、働き続けるための知識・技術の習得のための教育を指すものとされ、仕事にかかわらないことや、生きがいに通ずる内容も学習の対象に含まれる生涯学習とは区別して使われています。この点について、例えば、政府広報は以下のように説明しています。

「リカレント教育は、仕事に生かすための知識やスキルを学びます。(中略)一方、生涯学習は、生涯にわたり行うあらゆる学習で、学校教育や社会教育、さらには文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動や趣味など仕事に無関係なことや『生きがい』に通じる内容も学習の対象に含まれます」




なぜリカレント教育が
注目されているのか

今、リカレント教育が注目されている要因には、主に次の3つがあります。

①技術革新や、市場の変化の速さ

デジタル分野における技術革新が急速に進んだことで市場環境も大きく変化し、「従来の仕事の仕方やスキルでは通用しない」「これまでと異なる知識・スキルが求められる」という場面が増えています。AIやIT技術の導入、DXなどに対応して新たな事業・サービスを生み出したり、いち労働者として働いていくには、これまでの知識やスキルのアップデートと、新たな知識・スキルの習得が不可欠になってきています。その手段として、学ぶことと働くことを繰り返すリカレント教育が注目されるようになりました。


②進む雇用の流動化

企業の、従業員を定年まで雇用する体力が低下していることなどから、従業員にキャリア自律を求める企業が増えています。また、企業の生産性向上のためには雇用の流動化が必要だとも長年言われています。従業員・労働者の間でも、転職などによってスキルやキャリアを高めていくという価値観の高まりが起こっています。これらの要因から、従業員・労働者が自律的にキャリアを形成していくための学びの手段としてリカレント教育が注目されています。


③人生100年時代の到来

平均寿命の伸びにより、今後、より多くの人が100歳まで生きられるようになることが見込まれています。従来であれば定年後は働かずにのんびり過ごすといった生活ができていましたが、100歳まで生きるとなると、生活の糧が必要となり、より長く働く必要が出てきます。また、充実した人生を送る上で、長く働くことを選択する人も増えてくるでしょう。このように、仕事をする期間の長期化に伴い、働く上で必要な知識やスキルを何歳でも、いつでも身につけられるよう、リカレント教育の重要性が言われています。




リカレント教育で
何を学ぶべきか

リカレント教育として、大学が社会人向けのコースや講座を用意していたり、各種オンライン公開講座に大学や企業が講座を提供しています。分野も、ITから経営、法務、財務、マーケティング、語学など多岐にわたります。

その中で何を学ぶかは、「今後自分はどうなりたいか」「どのようなキャリアを歩んでいきたいか」など自らのキャリアプランから考えるとよいでしょう。ありたい姿や目指すキャリアを実現するために必要な知識やスキルを学べる講座などを選びます。

リカレント教育ツールの具体例

リカレント教育を受ける方法には、次のようなものがあります。

●オンライン講座を受講する

国もリカレント教育を推進しており、文部科学省が、社会人の学びを応援するポータルサイト「マナパス」を開設しています。マナパスでは、約5000の大学・専門学校等の講座を条件別に検索受講できます。また、無料で学べるオンライン講座「gacco」でも、大学や企業が提供する仕事のスキルアップに直結する講座を受講することができます。

●大学・大学院で学ぶ

大学院の社会人向けのコースや、大学が提供するビジネスの特定の分野に特化した講座などを利用する方法です。

●国の教育訓練給付金制度を利用する

一定の受給要件を満たす人が、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・修了した場合、その費用の一部が教育訓練給付金として支給される制度があります。IT、医療・福祉、事務などの資格取得のための講座などが対象となっています。

アンラーン

アンラーン(Unlearn)とは、「学んだことを意識的に忘れる」「知識・先入観・習慣などを捨て去る」という意味の英語で、学び直しや知識・スキルのアップデートの際のキーワードとして注目されています。新しい知識やスキルを身につける際、これまで得てきた知識やスキル、また、「こうするのが正しいはずだ」「これが成功パターンだ」といった先入観をいったん横に置き、あるいは捨て去って新鮮な意識で学ぶことで、新しい知識やスキルをスムーズに、かつ、これまでの培ったものと融合しながら取り入れ、身につけられるとされています。


作成/MANA-Biz編集部