トレンドワード
目の前に迫る「2025年問題」で企業が受ける影響と対策
知っておきたいトレンドワード32:2025年問題
待ったなしの状況と言われる2025年問題。高齢者の割合が増えることで企業にどのような影響があり、これからでもできる対策は何か。環境変化の中でも競争力を失わないために備えておきたいことについて解説する。
2025年問題とは
2025年問題とは、800万人いる団塊の世代の約5人に1人が2025年に後期高齢者(75歳)になることで、雇用や福祉、年金などで生じるさまざまな問題の総称です。 2025年には認知症高齢者数は約700万人になるとも推計され、高齢者世帯は約1840万世帯、うち一人暮らし世帯は約680万世帯に達すると見込まれています。 一方2023年の出生数は75万8631人と、想定より早いペースで減少。人口動態が偏っていくことで様々な影響が予測されています。
2025年問題が与える社会的影響
高齢化が進むことによって社会に与える影響として、主に次の3点が考えられます。
労働力不足による日本経済の低迷
高齢化によってより人手が必要となる業態がある一方で、生産年齢人口が減少していくため、今後ますます労働力の確保が難しくなると予想されます。その結果経済が低迷し、国際競争力が低下することが予測されます。また、人口減は消費人口の減少も意味するため、消費の低迷も見込まれます。社会保障費の負担増
高齢者の増加により、年金や医療保険、介護保険、生活保護などの社会保障にかかる費用の増加が見込まれます。その結果現役世代の社会保障費の負担はさらに増えると考えられます。財務省の試算によると、2025年には社会保障費が140兆円を超えると見込まれており、医療費は2018年に比べて1.2倍、介護費用は1.4倍になると予測されています。医療・介護体制維持が困難に
高齢者や認知症患者の増加により、ニーズの高まりに対して医療・介護人材はさらに人手不足が懸念されます。2025年には介護人材で約38万人の不足が見込まれており、現状の水準でのサービスが維持できなくなる可能性が高まっています。2025年問題が企業に与える影響
2025年問題は企業にとっても非常に大きな影響が予測されています。以下の代表的な3つの影響について説明します。
深刻な人材不足
2025年には労働者が約580万人不足すると見込まれており、中でもサービス業、医療・福祉行、卸売・小売業では深刻な人手不足が予測されています。 今後企業間の採用競争はさらに激化することが見込まれます。人手不足による倒産はすでに飲食店や小売業などで始まっており、2024年問題と言われる残業時間の上限規制で運送業者や建設業などはすでに人手不足でも、採用したくても人が集まらないという状況はますます深刻になると見られています。後継者不足による廃業
日本の企業・法人の9割を占める中小企業において、2025年までにその経営者のうち約245万人が平均引退年齢である70歳を迎え、そのうち約半数の127万が後継者未定というデータもあります。後継者が見つけられず廃業となった場合、従業員650万人の雇用と22兆円のGDPが失われるおそれがあるとみられています。 また現場においても、熟練の技術者が高齢により退職することで技術伝承が追いつかず、業務が滞る可能性があります。 【関連記事】 後継者不在は企業の深き悩みビジネスケアラーの増加
経済産業省の資料によると、毎年約10万人が介護を理由に離職しており、2030年には働きながら介護をするビジネスケアラーが約318万人に上る見込みです。介護と仕事の両立に疲弊して生産性や意欲が低下したり、離職したりすることを防ぐための職場環境づくりが急がれます。2025年問題に向けて企業が備えるべきこと
高齢化や人口減は国が取り組むべき大きな問題ではありますが、事業を継続していくため「この会社で働き続けたい」と魅力を感じてもらい、育児や介護等を理由に離職されない職場環境づくりは企業が今すぐにでも取り組むべき課題だといえるでしょう。具体的に企業に求められる対策として以下のものが挙げられます。
両立に向けた柔軟な労働環境の構築や多様な雇用形態の導入
育児や介護との両立が図りやすいように短時間勤務や遠隔地勤務、テレワーク、復職制度など、柔軟な雇用形態を複数用意する、育児・介護休業制度を充実させて利用を推奨するなど、離職率を下げるための施策が必要です。そのためには育児や介護と両立させている従業員が何を求めているのかを把握し、制度だけでなく風土や意識を変えていくことも重要です。 【関連記事】 仕事と育児・介護を両立するワーカーが抱える課題と求められるサポート 育児・介護休業法が改正、男性の育休取得は進むのか 法改正、女性活躍推進における課題とは
多様な人材の受け入れと働きやすい制度・環境整備
人材確保が難しくなることが見込まれるため、これまで以上に女性やシニア、外国人労働者など、潜在労働力の掘り起こしや多様な人材の採用に取り組む必要があります。 たとえば高年齢者雇用安定法改正で70歳までの就業機会の確保が努力義務とされたにも関わらず、確保している企業はまだ3割に満たないと言われており、年齢の幅を広げることも人材確保につながるはずです。 また、多様な人々が働きやすいと感じられる制度や環境を整えることが、人材定着のために必要となります。 【関連記事】 「70歳までの就業機会確保」の現状DXなど業務効率化とレガシーシステムの入れ替え
これまで人の手で行っていた作業をDXなどによって生産性を上げ、業務を効率化することで人手不足を補うのも効果的です。 一方、「2025年の崖」と言われる、老朽化したITシステムを起因とするさまざまな不具合などを解決できない場合最大12兆円の経済損失が見込まれるという課題への対応も急務となっています。レガシーシステムを刷新し、DXを進めなければ、複雑化やブラックボックス化への対応でむしろ生産性が下がることになりかねません。 DXによって従業員が付加価値の高い業務に集中できるようになれば、モチベーション向上や品質向上につながるなどのメリットもあります。事業承継の検討
後継者不在による廃業を防ぐため、事業承継計画の策定やM&Aのマッチングなど、国による支援も行われています。後継者の選定や教育、M&Aの検討など、経営者が引退しても事業を引き継いでいけるよう、早めの対策が必要です。